待ちに待った成人式まであと約3ヶ月。みなさん当日の準備は進んでいますか?晴れの日の衣装といえば、やっぱり振袖。「どんな色が似合うかな」「柄はどうしよう」と、あれこれ悩みつつも夢を膨らませて着物を選んだ人も多いはず。では、着物に合わせる帯はどうでしょう? 帯というと飾り程度のイメージかもしれませんが、結び方によって全体の印象を大きく左右します。着物と同じくらい帯にもこだわって、完璧な振袖美人を目指しましょう。
振袖の帯ってどんな帯?
ひと言で帯といっても、種類は実にさまざま。どんなシーンに合わせてコーディネートするかによって、締める帯は変わってきます。成人式のような式典では、「袋帯」を用いるのが一般的です。基本的にはその中から好きな色や柄、振袖に似合うデザインを選べばOK。しかし柄と結び方にも相性があるので、プロに相談しながら候補をしぼっていくと安心です。
袋帯
振袖をはじめ留袖や訪問着など、フォーマルな装いに合わせるには金糸や銀糸などを使った格調の高いデザインをチョイスします。
■ 形状
名称の由来にもなっていますが、表地と裏地に異なる2枚の生地を袋状に縫い合わせて仕立てられています。
■ 長さ
ほかの帯と比べて非常に長め。日常使いの名古屋帯なら、長さは3m60~70cm程度。浴衣などに合わせる半幅帯は、3m80cm~4mが普通です。一方、袋帯は4m30cmとはるかに長め。これはボリュームのある結び方で華やかさを演出するため。お太鼓結びを例にとっても名古屋帯では太鼓部分が一重なのに対し、袋帯では太鼓の部分を2つ重ねる「二重太鼓」という結び方をするのが基本。そのため通常よりも長さが必要なのです。
=デザイン、扱いやすさ=
礼装にふさわしく豪華なものが多め。金糸や銀糸を多用しきらびやか。思わず見惚れる美しさです。その反面、柄が入っているのは表だけで裏は無地。表地と裏地の間に帯芯と呼ばれる薄い布を挟んで仕立てます。昔と比べるとこの帯芯が薄くしなやかになったおかげで、伝統的な結び方だけでなく、現代的なアレンジを加えた「変わり結び」も仕上げやすくなっています。
■ 価格
10万円前後で買えるものから100万円以上するものまであります。まず、職人が手作業で仕上げる手織りの帯は高額になりがち。これは機械織りと違って大量生産ができないからです。次に、素材はポリエステルより生絹のほうが上質であるということでお値段も上がってきます。近ごろではデザインや織り方が比較的カジュアルな、普段使い用の「洒落袋帯」というものもあります。数万円で購入できますが、価格を考えると振袖にはあまり向いていません。振袖には必ず振袖用の帯を合わせましょう。少しでも金銭的な負担を抑えたいのであればレンタルもおすすめです。
■ 丸帯
その他、フォーマルな帯には丸帯というものもあります。長さは4m36cm以上、表にも裏にも柄が入っているため、重さも3kg以上と重厚感たっぷり。女性用の帯としては最も格式が高く、振袖と合わせても問題はありません。しかし非常に重くて結びにくいため、近年の成人式で見かけることは、ほとんどなくなりました。現在では主に、舞妓さんの衣装や花嫁衣装に使われています。
振袖帯の選び方や結び方をご紹介
華やかな見た目が印象的な成人式の帯。実はハタチのこの時期だからこそ似合う結び方、色や柄の組み合わせがあることをご存じですか。自分の好みを大切にしつつも、ポイントを押さえて選ぶことで、いっそう思い出に残る着こなしが叶います。
振袖にぴったりな結び方
■ 文庫結び
江戸時代、武家の娘が好んだ結び方。リボンのような形をしていて、とても可憐で清楚です。小柄で可愛らしい雰囲気の方や、シンプルな振袖と好相性。「花結び」など文庫結びをアレンジした結び方もたくさんあります。どれも崩しすぎず、伝統的なポイントはきちんと守られているので、あらゆる着物に合わせられます。
■ 立て矢結び
斜めに蝶結びをしたような形で、立体感があります。縦に大きく結ばれた羽は、豪華できりっとしたイメージ。正面から見た時も肩から少し帯が見えて印象的です。背中に矢を背負っているように見えるため、この呼び方になったといわれています。すらりと長身の方、ゴージャスに装いたい方にぴったり。
■ 二重太鼓結び
最も基本的な結び方である太鼓結びを二重にしたもの。重ねることで通常よりボリュームが出て、お祝いの場にふさわしい格になります。上品な印象を与えてくれるとともに、着物のラインを美しく見せてくれる効果も。シンプルで控えめな色柄の振袖に合わせると、いっそう気品が増します。華美に装うよりも落ち着いた雰囲気がお好みの方におすすめ。
成人式にはNGな振袖帯の結び方
■ 一重の太鼓結び
名古屋帯を使用した日常使いの着物に合わせる結び方。シンプルすぎて格が釣り合わないため、正装には不向きです。
■ 銀座結び
小紋や紬に適した普段使いのスタイル。結ばずにねじるだけというお洒落な結び方ですが、使えるのはカジュアルシーンのみ。
■ 角出し結び
文庫結びよりも粋で大人っぽい印象です。しかしこちらも普段使い用の格付けなので、成人式の振袖には×。
振袖帯のおすすめの色
振袖と相性の良い帯の色は大きく分けて金系、白系、黒系、その他の4つ。どの系統にするかで全体の印象が大きく変わります。また、あえて振袖の反対色を選ぶというテクニックも。なりたいイメージを想像しながら選びましょう。
■ 金系
絢爛豪華なイメージ。どんな振袖にも調和します。
■ 白系
優しく上品な雰囲気。暗めの振袖に明るさを添えるのに適しています。
■ 黒系
大人っぽくすっきりとした印象。締め色としても効果的。
■ その他
個性的でお洒落。自分らしさをとことん追求したい方に。
■ 振袖の反対色
振袖の色を引き立てます。可愛らしい雰囲気にも。
振袖帯の柄と種類
大切にしたいのは、振袖の柄の邪魔にならないこと。そしてバランスです。あまりにもゴチャついていると子どもっぽくなり、逆にシンプルすぎると寂しい印象になってしまいます。また、柄の入り方によって、できる結び方が変わってくるため、事前に確認しておきましょう。
■ 全通柄
端から端まで全面に柄が施された贅沢なタイプ。太鼓の部分、胴回り、たれに至るまですべてに柄が見えるようになっており、無地の部分を気にせずに多彩な結び方ができます。その一方で、柄が多いだけにほかと比べるとやや重く、価格もお高め。
■ 六通柄
帯全体の6割程度に柄があるものを六通柄といいます。帯は胴回りを2周巻きますが、着用後に見えなくなる1周目が無地になっています。柄が少ない分、全通柄より価格はリーズナブル。ただし無地の部分を隠さなければならないため、結び方を考慮しなければなりません。体型によっては無地の部分が見えてしまうことがあるので注意。
■ お太鼓柄
太鼓結びにぴったり。全体の約3割に柄が織られて、ちょうど胴とお太鼓部分に柄が出るよう計算されています。変わり結びをする振袖には不向きです。
■ 古典柄からモダンな幾何学模様まで
花鳥風月などがモチーフとなっている格調の高い有職文様や、自然や風景がデザインされた古典柄は比較的どんな振袖にも相性がよく調和の取れたコーディネートが完成します。一方でシャープなラインや無機質なデザインの帯は、コーディネートにインパクトを与え個性的な仕上がりとなり近年人気となっています。
振袖帯飾りにもこだわって
後ろ姿をいっそう豪華に演出したい時に活躍するのが帯飾りです。コサージュのようなもので、結びめにさっと差すだけでアレンジ完了。使わなかった髪飾りを活用するのも良いアイデアです。後ろ姿は自分では見えませんが、周囲からは正面同様に注目を集めるので、ぬかりなく仕上げてください。
母から娘へ受け継ぐママ振
「ママ振」とは名前の通り、母親が成人式で着た振袖のこと。着物は保管状態が良ければ何年経っても着られます。そこでクリーニングやサイズ調整をし、帯や小物を現代風にアレンジして、自分がもう一度着直してみようとする新成人女性が増えてきています。親から子へと長く受け継ぐことができるのは、まさに着物の醍醐味。ではなぜ「ママ振」が人気なのか、「ママ振」の魅力をご紹介します。
ママ振の魅力
■ 費用を安く抑えられる
手持ちの「ママ振」を使えば、振袖にかかるはずだった購入費用やレンタル料は無料に。帯や小物などの準備費用、ヘアメイク、着付け、写真撮影料だけで済みます。帯や小物も母親のものを使うなら、さらに負担は軽減。ただし、古い振袖を再利用するにはメンテナンスが必要です。購入するよりは安いですが、ある程度の出費は計算に入れておくのがベター。(メンテナンスについては後述)
■ いつでも何度でも着られる
いったんお直しをしてしまえば、成人式以外でも好きな時に着ることが可能。卒業式、初詣、各種パーティ、結婚式など、さまざまなシーンで気兼ねなく使えます。
■ 友人と被らない
振袖や帯は種類が豊富なので、他の人と丸被りすることはまずありません。しかし流行のデザインを選ぶと、なんとなく似たような雰囲気になってしまうことはありえます。その点「ママ振」なら、被る可能性は限りなく低い。合わせる帯や小物を工夫すれば自分らしさも発揮でき、ほかと差がつくコーディネイトが実現します。
■ 昔の振袖のほうが品質が良いことも
最近の振袖は製造コストを抑えるため、インクジェット方式でプリントされたものが広く流通し増えてきています。対して母親世代の振袖は「総絞り」や「手描き友禅」など、職人が伝統的な技法を駆使して仕上げた逸品ぞろいでした。100万円を超えるような高品質な振袖なら、新品にも引けを取らない値打ちがあります。
■ 家族みんなの喜びに
大切な振袖を娘がまた着てくれるのは、やはり家族にとって嬉しいこと。特に着用した母親、その振袖を選んだであろう祖父母の感動はひとしおだと思います。「ママ振」をきっかけに、久しぶりに昔のアルバムを開いて振袖姿を見比べたり、思い出話に花を咲かせたりできるのも魅力です。
ママ振の注意点
振袖はもうすでにあるのだから準備はゆっくりで大丈夫、と気を抜いてはいませんか。何十年もタンスで眠っていた振袖を使うには、それなりのお仕度が必要です。仮に使えない場合は、購入かレンタルを検討しなければなりません。少なくとも本番の数か月前には準備をスタートしましょう。状態の良し悪しが判断できない際は、呉服店に持ち込むのもアリです。
■ クリーニングは必須
ずっとしまいっぱなしにしていた振袖は、シミやカビ、変色が広がっている可能性があります。一見問題ないように見えても、裏地に小さなシミが点在していたり、不快な臭いが沁みついていたりして、そのままでは着られません。必ず一度はクリーニングに出して、丸洗いやシミ抜きをしてもらってください。ほつれがあれば一緒にメンテナンスを。
平均費用:クリーニング約1~2万円(シミ抜き、ほつれの修復は除く)
■ サイズが合わなければお直しも
すらりと背が高く、手足も長い現代女性。「ママ振」ではサイズが合わないことがあります。母親と娘で身長差が大きい場合は分かりやすいですが、同じくらいの身長でも腕の長さが違ってびっくり! ということも。多少なら着付けで調整できるものの、差が大きい時には仕立て直さなければなりません。
平均費用:約2~8万円
■ 小物類も自分でチェック
帯や長襦袢、帯締め、帯上げ、草履なども当時のものを活用するなら、欠けているものがないかしっかり確認し、振袖と同様にクリーニングに出すこと。壊れていたり足りないものがあれば、購入またはレンタルする必要があります。ギリギリになって焦らないよう計画的に。
平均費用:長襦袢+帯のクリーニング約1万5千円、小物類のレンタル約3~8万円
振袖を今風に着こなすには帯が重要!
着姿に対して占める割合が、振袖に次いで高いのが帯です。特に後ろ姿は、帯が“顔”だと断言してもいいほど。「ママ振」を着てみて、なんだかちょっと垢ぬけないなと感じたら、帯だけは最近のものに変えてみるのも1つの手。色や柄に流行を取り入れてみると、一気にトレンド感が増します。余裕があれば帯締めや帯揚げも新調してみて。
関連コラム:振袖|時代を超えて愛されるママ振の注意点とポイント
まとめ
帯は振袖の見栄えを引き上げてくれる非常に大切なアイテムです。成人式では、豪華で振袖にも合う袋帯を使用します。振袖に合う伝統的な結び方や、現代的なアレンジを加えた「変わり結び」もおすすめ。「ママ振」を着る場合は、帯だけはトレンドものに変えてみても◎。カラーなどを取り入れることで流行りの雰囲気を演出できます。一生に一度の成人式、せっかくなら自分でも理解を深めて、これぞという1本をプロと一緒に厳選してみるのも楽しい思い出になります!細部にまでこだわりが光るあなたらしい晴れ姿で、大人への第1歩を踏み出してみませんか。
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