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2022.11.24
コラム

着物の文様に注目してみよう

着物の文様には、長い歴史の中で育まれてきた美意識や習わし、季節を愛する心などが詰め込まれています。近年では東京2020オリンピック・パラリンピック選手団の公式服装に「エ字繋ぎ」「鱗(うろこ)」「七宝」などの文様が取り入れられたのが印象的でした。その他にも人気漫画・アニメに登場する着物の文様がブームになるなど、改めてその魅力が注目されています。文様への理解を深めて着物ライフをもっと充実させてみましょう!

【目次】
1 文様の成り立ちと魅力
2 伝統的な文様
3 冬の文様
4 まとめ

文様の成り立ちや魅力

日本の伝統文様はデザイン性に優れていて世界的にも人気です。古くから着物、調度品、食器、工芸品などに幅広く用いられてきたほか、最新の建築物や雑貨にも多く使われています。時代が変わっても決して揺らぐことのない、芸術的な価値が文様にはあるのです。日本独自の文様はどうやって生まれたのか、そのルーツを探ってみましょう。

日本の文様の歴史

はるか昔、中国や西アジアから伝わった模様がルーツの1つだと考えられています。例えば、奈良時代に建立された正倉院には、聖武天皇ゆかりの品々が保管されており、そのどれもが国際色豊かなのが特徴です。唐草、唐花、華文などの植物文様、孔雀、鹿といった動物文様、動物に人や草花を組み合わせた狩猟文や樹下文などが見られ、これらはまとめて「正倉院文様」と呼ばれています。
日本最古の古典文様でありながら、今でも留袖や訪問着、帯にデザインされているロマンあふれる文様です。平安時代以降に伝えられた図柄も多く、唐をはじめとした異国のものと日本の文化が融合して、たくさんの文様が生まれたといわれています。江戸時代に入ると、歌舞伎役者由来の柄が流行するなど、時代ごとに変化を繰り返しながら日本の文様は発展してきました。

季節に合わせた文様の取り入れ方

日本は春夏秋冬のみならず、四季をさらに6つずつに分けて合計24の季節とした二十四節気(にじゅうしせっき)があります。また季語も非常に多く、四季折々の風情をとても大切にしてきた国民です。それは着物にも表れており、花、草、木、月、星、動物など自然界のあらゆるものが図案化され、いきいきと描かれています。
■ 二十四節気(にじゅうしせっき)とは
文様を選ぶ時は、実際の季節よりも1ヶ月ほど先取りするのが粋なおしゃれとされています。晩秋ならそろそろ冬のモチーフを着物に取り入れてみるのも素敵です。一方、桜や菊など日本を代表する植物は通年着てもOKというルールもあります。「この文様はいま着ても大丈夫なのか?」「季節感のあるコーディネートが知りたい」という人は、ぜひ呉服店に相談してみてください。

伝統的な文様

着物に興味を持つきっかけはひとそれぞれ。アニメや映画などの作品を通じて初めて文様を知ったという人も多いかと思います。特に縁起の良い「吉祥文様」は古くから多くの人に愛され、現代でも結婚式や成人式などおめでたい席には欠かせません。昔からある古典文様を中心に名前や意味を改めてチェックしてみましょう。

市松模様

碁盤目状の格子の目を色違いに並べたもので、チェック柄の仲間です。元々は「霰(あられ)」や「石畳」と呼ばれていました。江戸時代、人気歌舞伎役者の佐野市松が石畳模様の裃(かみしも)を着用していたことで、「市松模様」と呼び方が変化したと伝えられています。上下左右に途切れることなく続き、終わりのないイメージから、「永遠」「発展」「繁栄」の象徴にも。東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムにも採用された日本を代表する文様です。

麻の葉文様

正六角形をベースにした幾何学文様で、大麻の葉の形に似ていることからこの名が付いたそう。平安時代の仏像の衣服、仏教美術にも多用されてきた伝統的な文様です。江戸時代に歌舞伎や浮世絵を通して庶民にも広まりました。麻は4ヶ月で4mになるほど成長が早く、とても丈夫な植物。このことから幼子の健やかな成長を願って、赤ちゃんの産着や子どもの着物によく使われていました。

鱗(うろこ)文様

正三角形または二等辺三角形を上下左右に連続して並べた柄のこと。蛇や竜、魚の鱗に似ているのが特徴です。脱皮を繰り返す蛇にちなんで、「生命力」や「再生」の意味があるとされています。また古くから三角には魔除けや厄除けの力があると信じられており、京都ではいまでも女性の厄年(33歳)に「鱗文様」の長襦袢を着る風習が残っています。

毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)

「長寿吉兆」「永遠の繁栄」を意味する亀の甲羅を模したもので「吉祥文様」の1つです。亀甲を山の形に3つ組み合わせて繋いだ柄は、七福神の1人である毘沙門天の甲冑に使われているため、特に「毘沙門亀甲(びじゃもんきっこう)」と呼ばれています。

幼虫から成虫へ美しく姿を変える蝶は、女性の人生と重ねられることが多く、美の象徴にもなっています。そして劇的な変化を遂げる様子から、「死と再生」「復活」「輪廻転生」「変化」、天高く飛び立っていく姿から「長寿」「不死」「立身出世」の意味も含んでいます。縁起が良いため、女性だけでなく武士にも愛された文様です。振袖にあしらわれる人気の高い文様です。

棒縞(ぼうじま)

古来、日本には縞という言葉はなく、筋(すじ)という字を当てるのが一般的でした。室町時代に外国船がもたらした生地を「島渡りの布」と称し、そこから転じて筋から縞へ呼び方が変わったといわれています。「縞模様」にはほかにも多くの種類があり、シンプルだからこそ奥が深いと考えられ「粋の真髄」という人もいるほど。女性用の普段着から格式高い江戸小紋、男性用の袴まで幅広く使われています。

エ霞文(えがすみもん)

霞文様の一種。形のない霞を日本ならではの感性で図案化したもので、着物の柄を構成する際に模様の区切りやぼかしなどで多用されています。特にカタカナの「エ」のような形で霞を表現したものを「エ霞文(えがすみもん)」と呼び、「吉祥文様」と組み合わせて使うことも。

桧垣(ひがき)文様

桧の薄板を斜めに組んだ垣根をデザイン化した文様です。規則的にきちんと並んでいる様から、「礼を尽くす」などの意味があります。白生地の紋意匠に数多く用いられています。

 青海波(せいがいは)と瑞雲(ずいうん)

無限に広がる海原を図案化した波文様には、「未来永劫」「永遠の平安」などの意味があります。その中でも、半円を鱗状に並べて波を表現したものを「青海波(せいがいは)」と呼びます。雲文様の1つである「瑞雲(ずいうん)」は、おめでたいことが起こる前兆として現れる瑞祥という雲を文様化したもの。「吉兆文様」として多く用いられています。

冬の文様

まもなくやってくる本格的な冬に備えて、これからのシーズンにおすすめな文様を集めました。寒さに負けずに美しく咲く花、クリスマスやお正月などのイベントと相性が良い文様もたくさんあります。ぜひコーディネートに取り入れて冬のお洒落を楽しみましょう。

 植物をモチーフにした文様

・菊
着物に描かれる花の中でも非常に人気が高い菊。日本を代表する花ということで1年中着られますが、実際に咲き誇るのは秋から冬にかけてです。元は中国で薬草として用いられていた花で「仙花(仙人の花)」と呼ばれていました。日本には奈良時代から平安時代に入ってきたといわれており「幸福のシンボル」「豊年の兆し」などとして愛されています。

・まんじゅう菊
菊の花をまんじゅうのように丸くデザインした文様。花弁を省略し、ふっくら愛らしく描かれているのが特徴です。「万年生きられますように」という長寿の願いを込めて「万寿菊(まんじゅぎく)」という字を当てはめることもあります。

・椿
春の訪れを告げる聖なる木。冬に葉を落とさないため、霊力を持つ木として古来から神事に用いられてきました。写実的かつ単独で描かれているものは冬に、デザイン化されていたり総柄の場合は通年着てもOK。雪が積もった「雪持ち椿」は春を待つ意味を込めて、12月から2月ごろにまとうと特に風流です。花だけでなく葉や枝と一緒に描かれることが多いのが、桜や梅などと異なる面白いところ。

・南天
南天はお正月の飾りや漢方に使われる植物です。名前の響きから「難を転ずる」という意味があり、縁起の良い木として古くから親しまれてきました。1年の締めくくりや新しい年の幕開けにふさわしい柄です。

 クリスマスらしさを演出する文様

・雪
大雪が降った年の春は雪解け水がたくさん流れるため、稲がよく実るといわれています。ゆえに雪は清らかでめでたい冬の風物詩とされてきました。雪の結晶を6弁の丸い花のように表現した「雪輪(ゆきわ)」、雪輪の大きさや形を自由に変えて文様の区切りに使う「雪輪取り」など種類もさまざま。冬を代表する文様ですが「暑い季節に涼を得る」という日本人ならではの感覚で、意外なことに夏の着物にも使われています。

・星
平安時代の陰陽道の影響を受け、着物の文様として使われるようになりました。星を〇で表現する古典柄のほか、現在ではおなじみの星型をモチーフにした楽しい柄も数多く登場しています。星は秋の文様ですが、デザイン化されたものは通年着てOK。クリスマス模様と組み合わせるのがおすすめです。

 ・クリスマス模様
古典柄ではありませんが最近はツリーにサンタ、雪だるま、プレゼントなどを取り入れた「クリスマス模様」の着物や帯も販売されています。わくわく感いっぱいの可愛らしいコーディネートにぜひ。

 お正月に合わせたい吉祥文様

・松
風や雪に吹かれても1年中緑色を保つ松は、古代より長寿の象徴とされてきました。松が意匠として使われはじめたのは平安時代。現在に至るまでの間に多様に発展し「根引き松」「若松」「扇面松」「枝松」など、さまざまな松文様が使用されています。

 ・竹
みるみるうちに竹の子から立派な若竹になる様子から、竹の文様は「成長」を意味します。また根をしっかり張ってまっすぐ伸び、中が空洞 = 腹に一物がなく、常に青々と葉を繁らせる姿を「君子」に重ねることもあり、古来から縁起の良い植物だとされています。 

・梅
厳しい寒さの中、ほかの花に先駆けて咲く梅は、逆境に耐えて理想の人生を切り開く花木として愛好されてきました。多彩に図案化され、春一番に着る文様として重宝されています。松竹梅と3つ組み合わせて用いられることも多く、おめでたい席にぴったり。

・宝尽くし(たからづくし)
打出の小づち、宝巻(ほうかん)、巾着、金嚢(きんのう)、宝珠(ほうじゅ)など、いろいろな宝物を並べた大変縁起の良い文様。元々は中国の文様でしたが室町時代に日本に伝わり、独自のアレンジが加えられて宝尽くしになったといわれています。

まとめ

いかがでしたか?今回は古典文様と冬におすすめの文様をご紹介しました。一度は目にしたことがある文様もあったのではないでしょうか。ぱっと見のインスピレーションで着物を選ぶのも楽しいですが、文様に込められた思いを大切にしてコーディネートを考えるのもとても粋です。文様をうまく生かして、季節感や自分らしさを演出してみてください。着物を着るのがもっと面白くなるはずです。