愛知県豊橋市で振袖や学生服・学校用品、着物、七五三衣装を取り扱う(株)山正山﨑「お知らせ」ページです。

お知らせCOLUMN

2023.01.19
コラム

着物の寸法を見直してみよう

着物の美しさといえば、繊細な柄や鮮やかな色に目がいきがちですが、実は「寸法」も非常に重要な要素であることをご存じでしょうか。自分にぴったり合った着物を選ぶだけでも着姿がぐっと映えるんです。新年を迎えたこのタイミングで、気持ちも寸法も新たに着物ライフを始めてみましょう。

【目次】
1 着物の寸法が重要な3つの理由
2 正しい採寸の手引き
3 着物のサイズが合っていない時の対処法
4 まとめ

 

着物の寸法が重要な3つの理由

よく聞く「着物は着付けでサイズ調整できるのが良いところ」というフレーズ。確かに間違ってはいませんが、着付けでカバーできる範囲にも限界があります。サイズのズレが許容範囲を超えていると、さまざまな不都合が生じてくるので要注意。この章ではまず自分にぴったり合った着物を着ることの魅力を解説します。「譲り受けた着物が多くて寸法がバラバラ」「若い頃に呉服店で割り出してもらった寸法をそのまま使っている」「着物はフリーサイズだと思ってあまり寸法を気にしてこなかった」という人は、一度測り直して今の自分の寸法を把握しておくことをおすすめします。

着姿が自然と美しくなる

身長に対して身丈が短いと、おはしょりが長く作れなくなります。おはしょりは短ければ短いほど形が整えにくく、帯から1cm程度しか出ないなんてことになると、いかにも無理して小さい着物を着ている感が出てしまい不格好です。反対に大きすぎると、着付けによっては隠した部分のゴワつきが目立ってしまい、やはり美しいラインが出にくくなります。自分サイズの着物であれば、こういった問題は起こりません。おのずときれいな着姿になります。

着付けが楽

お出かけ前の限られた時間、できれば着付けはささっと済ませたいですよね。しかし着物の寸法が合っていなければ、サイズ調整のために余計な手間がかかってしまいます。特に久しぶりに着物に袖を通す人だとなかなかスムーズに着付けられず、焦れば焦るほどおかしくなって約束の時間を過ぎてしまった…なんてことも起こりがち。上前と下前を合わせれば脇線の位置もぴたりと自然に決まるように、自分サイズの着物であれば素早くきれいに着付けられるのです。

着崩れにくくなる

着付けが上手くできていれば、着崩れも起きにくくなります。例えば腰骨の上のおさまりの良い位置に腰紐を締めればおはしょりもちょうど良い長さになって、時間が経ってもずり落ちてきにくいもの。着崩れしにくいということは、着心地も良いということです。きっと着物でのお出かけがより楽しめるようになります。

正しい採寸の手引き

次は最低限押さえておきたい採寸のいろはをお伝えします。呉服店でお仕立てするのならお店のスタッフにお任せしておけば大丈夫ですが、インターネットで購入、またはプレタ(仕立て上がり済みの着物)やアンティーク着物などが欲しい人は、基礎だけでも知っておくと役立つのでチェックしてみましょう。

着物の単位について

まずは着物のサイズを表す単位をおさらいしましょう。メートル法(mm、cm、m)を用いる洋服に対し、着物は尺貫法(しゃっかんほう・尺、寸など)と呼ばれる昔ながらの単位を用います。ちなみに尺も2種類あり、1寸約3.8cmの鯨尺(くじらじゃく)と1寸約3cmの曲尺(かねじゃく)が現代でも使われています。着物には鯨尺を使うことのほうが多いですが、東北地方の一部では曲尺を使う地域も。ほんの少しの差ながら、全身のお仕立てとなると大きな間違いにつながるので注意が必要です。ここでは鯨尺を用いて解説します。単位は小さいほうから、厘(りん)・分(ぶ)・寸(すん)・尺(しゃく)・丈(じょう)の主に5種類。10刻みで単位が変わっていき、10寸=1尺(約38cm)になります。普段使い慣れている単位と違うため最初はややこしく感じるかもしれませんが、一度覚えてしまえばそれほど難しくはありません。

着物の各部位の名称と測り方

◆身丈
身丈とは着物の衿付けの部分から裾までの長さのこと。※女性
自分の身長±5cmがベスト。差は最大で±10cmにおさめましょう。女性の場合、おはしょり(帯の下)である程度長さを調整できるので、これくらいの誤差なら問題ありません。羽織ってみた時に床に裾がズルくらいがちょうど良いといわれています。一方で男性の着物にはおはしょりがないため、許容範囲はもっと狭め。
直立して首の後ろ中央の突起(頸椎点)からかかとの中心まで真っすぐ測った長さが身丈になります。また長襦袢は、身長×0.85cmが最適な長さ。裾がくるぶしにくるくらいのサイズです。長すぎると着物からはみ出してしまうため気をつけてください。羽織は裄(ゆき)よりも1cmほど長いものを選ぶのが理想です。微妙な差ですがサイズが合っていないとバランスが悪いので、できれば細かい部分にも気を配りましょう。ちなみに身長は60歳前後から少しずつ縮んでいくといわれています。年を重ねたら測り直すのがおすすめです。


◆裄丈(ゆきたけ)
裄丈(ゆきたけ)とは首の後ろから袖先までのこと。
腕を斜め45度に下げた状態で、首の後ろから手首の丸い骨の辺りまでを測ります。洋服の感覚でいくとやや短く感じるかもしれませんが、着物の場合は所作を美しく見せるために脇を締めていることが多いので、袖が短くてもそれほど気にならないことがほとんどです。特に夏場は少し短めのほうが涼やかに着こなせます。誤差は±3cmならOK。この範囲を目安に自分がしっくりくる長さを探してみましょう。生地の硬さによって同じ長さでも仕上がりに差が出ることもあるので、その辺りもふまえて見立ててくれるお店だと安心です。


◆袖丈
袖丈とは袖から垂れ下がる振りの長さのこと。
最近の着物は1尺3寸(49cm)で統一されているのが普通です。これは日本人女性に多い身長155cm~165cmに合わせているため。それより高い身長なら5分(1寸の半分)~1寸足し、低い場合は引くとちょうど良いと考えられています。アンティーク着物だと現在の基準より長かったり短かったりするため、下に着る長襦袢の長さに注意が必要です。長襦袢の袖丈が短いと、時間が経つうちに外へ飛び出してしまうことがあります。ぴったり同じ長さか1cmほど長いものを選ぶと良いでしょう。


◆後巾(うしろはば)と前巾(まえはば)
後巾とは背中の中心線から脇の線までの長さ。前巾とは脇の線から前身頃の縫い目(おくみ)までの長さで裾巾のこと。
※おくみ(前身頃の体の中央にあたる部分)の巾は約15cmと決まっているので含みません。
後巾と前巾は、身巾と比較して最適なサイズを割り出します。前巾+おくみ巾15cm+(後巾×2)の数値と身巾がだいたい合っていれば大丈夫でしょう。ベストなバランスは体型によっても異なります。長すぎると体に巻き付いて動きにくく、短すぎるとはだけやすく感じます。プレタやアンティーク着物などすでに仕立て上がっているものの場合は、試着してみると確実です。


◆身巾
身巾とは腰周りで一番太い部分。いわゆるヒップのこと。
計算上は、前巾+おくみ巾15cm+(後巾×2)=身巾ということになりますが、着物の下に肌襦袢を着ることを考えると、ほんの少しだけ余裕を持たせておくのがベター。脇の縫い線が体の真横にきた状態で、前面が前巾とおくみ巾できちんと覆われていれば問題ありません。後ろ側は背中心と呼ばれる縫い線が体の真ん中を通っていればOK。身巾が狭いと背中心が体の左側へ、広いと右側へずれてしまいます。自分では見えにくい部分ですので鏡を使って確認しましょう。

着物のサイズが合っていない時の対処法

 着物のサイズが大切だということは分かったけれど、寸法が合っていないお手持ちの着物をすべて買い替えるというのは現実的ではありませんよね。これから購入する着物は自分にぴったり合った寸法にするとして、すでにあるサイズ違いの着物は着付けをひと工夫して対応を。少しコツは必要ですがある程度は対処できます。

身丈が長すぎる場合

身長に対して身丈が長い場合は、おはしょりが出すぎてしまいがち。おはしょりの長さの目安は人差し指1本分だといわれています。そのことを意識して調整してみましょう。
1.まずはいつも通り腰紐を結びます。
2.長すぎるおはしょりを上に持ち上げます。布が余っていないか確認。
3.衿元から滑らせるようにして、バストの下辺りで胸紐を軽く結びます。
4.2で持ち上げたおはしょりを下げ帯を当て、おはしょりの位置が決まったら形を整えます。
5.おはしょりの長さや形がきちんと整ったら、胸紐を締めて留めます。
6.2本の胸紐の間から生地を引っ張り出し、後ろのおはしょりも調整。
7.仕上げに余分なおはしょりを押さえるように伊達締めをします。
8.あとは通常通り着付けてください。

身丈が短すぎる場合

十分な長さのおはしょりを作るには、着物を羽織った際に裾が15cmほど床に余っている必要があります。足りなさそうな場合は、腰紐をいつもよりも低い位置で結びましょう。裾が短いほど腰紐の位置も低くなります。腰骨までなら下げてもセーフ。こうすることでおはしょりをしっかり出せるようになります。

裄丈が長すぎる場合

これが着付けで最も調整しにくいパターンです。できる対策としては、「衣紋をあまり抜かないようにする」「掛け衿を普段よりも多く折り返して衿巾を狭めにする」「衿をなるべく詰めて着付ける」などの方法があります。上手くいかないようなら、やはりお直しに出すのがおすすめです。寸法を縮める場合は筋消しなどの追加費用もかからないため、寸法を伸ばすよりも安価で済む傾向にあります。

裄丈が短すぎる場合

アンティーク着物は今の着物より小さめに作られているものがほとんど。普段使いであれば多少短くてもマナー的には差し支えありませんが、見た目を考慮するならできる限り丈は長く取りたいものです。一番簡単なのは、「衣紋をたっぷり抜くこと」。その他であれば、「ゆったり衿を合わせて半衿をたくさん見せる」という手もあります。おしゃれな柄の半衿であれば、少し多めに見せても素敵です。コーディネートのポイントにもなります。

身巾が広すぎる場合

身巾がありすぎて布が余ってしまうと、締まりのない印象に。かといって着物の前側で体を包み込むと動きにくくなるので注意が必要です。
【下半身】
1.右脚がちょうど隠れる程度の位置に上前を持ってきます。
2.体の真横にきちんと脇縫いがきているか確認し、上前のバランスを整えます。
3.上前が整ったら、次は下前の位置を定めます。左足がぴったり隠れる位置が◎。
4.余った布は体に巻き付けず、手前に折り返して挟みます。
5.2で決定した位置に上前をかぶせます。
【上半身】
1.腰紐を結び、両手を身八つ口に入れておはしょりを作ります。
2.左右の衿を真横に引いて整えます。
3.バストの下あたりで胸紐を結びます。
4.背中側にシワが寄っているので、余っている布を手前側に引っ張って脇の下まで持っていきます。
5.脇の下に集めた布を親指で脇縫いにグッと押し込みタックを取ります。
6.胸周りの布が余っていないかチェック。シワが寄っていたら胸紐の下から布を引っ張ってすっきりさせます。
7.最後に伊達締めをして帯を結べば完成。

身巾が狭すぎる

着物はヒップから裾にかけてすぼまっていくシルエットが美しいとされていますが、身巾が足りないとだんだん裾が開いてきてしまい残念なことに…。理想的な着姿をキープするために以下の2つの方法を試してみましょう。


◆着物ベルト(コーリンベルト)を使う
長襦袢の上前に着物ベルトのクリップを留め、さらにベルトを体の後ろから一周まわした後、着物の下前にもう片方のクリップも留めます。こうすることで裾の広がりを押さえられます。キツすぎると歩きづらいので、ベルトの長さには余裕を持っておくこと。


◆下前に布を足す
衿先に布を足すことで、ここだけは脇に届くようにする方法です。はだける確率を下げることができます。着物ベルトを持っていない人はこちらを試してみてください。

まとめ

いかがでしたか。サイズが合った着物を選ぶことは、着姿を美しく見せる近道です。サイズが合わないせいで背中心などがズレてしまうと、周囲の人にも寸法が合っていないことが分かってしまいスマートではありません。まずは「身丈」「裄丈」「身巾」の3ヶ所の寸法に気を配ってみましょう。この機会に仕立てが丁寧な呉服屋さんや、試着ができてきちんとアドバイスをしてくれるショップを見つけておくのもおすすめです。