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2023.02.23
コラム

着物で卒業式に参列しよう

お子様の大切な門出の時である卒業式。節目のセレモニーだからこそ、着物で参列したいと考えているお母様もいるかと思います。しかしスーツやワンピースに比べて、着物はややハードルが高いのも事実。そこで今回は、なかなか着物を着る機会がない方でも分かりやすいよう、卒業式向けの着物の選び方や小物の合わせ方などをご紹介します。

【目次】
1 卒業式にぴったりな着物ってどんなもの?
2 着物に合わせる小物について
3 着物を久しぶりに着る際の注意点
4 まとめ

卒業式にぴったりな着物ってどんなもの?

フォーマルな場で着用するのにふさわしい着物は主に2つ。まず最も格上とされる「礼装」、その次に格式が高い「準礼装」です。「礼装」は黒留袖や色留袖、「準礼装」は訪問着や色無地のことを指し、卒業式には「準礼装」が向いているとされています。TPOに合わせた着物選びや着付けは慣れていない方には大変に感じるかもしれませんが、そこに費やす時間そのものがお祝いの気持ちとなり、お世話になった先生方への感謝と敬意の表れとなります。ポイントを押さえて素敵な着物姿で卒業式に臨みましょう。

訪問着は卒業式の定番

卒業式に参列するお母様に最も人気があるのが訪問着です。大正時代まではフォーマルな場面では留袖、日常使いには小紋を着るのが一般的でした。しかし時代の流れとともに2つでは対応しきれなくなり、そこで間をとって訪問着が生み出されたといいます。このようないきさつから、留袖ほど敷居が高くなく、けれど小紋よりはきちんと感があるという使い勝手の良さを兼ねそろえています。お子様の卒業式だけでなく、入学式、お宮参り、七五三のほか、結婚式やパーティのお呼ばれ、お茶会、観劇などにも着ていけるので1枚持っておくと大変便利です。デザインとしては、着物全体もしくは肩、胸、袖、裾にかけて模様が1枚の絵のように切れ目なくつながっている「絵羽模様」が特徴。付け下げや色無地よりも華やかな雰囲気があります。また卒業式の場合は、紋のあり・なし問わずどちらも着用OK。紋があるタイプはフォーマルシーンで活躍する一方、パーティやお茶会にはやや格が上がり過ぎて使いにくいので、幅広く着用したいなら紋なしタイプを選ぶのがおすすめです。

色無地はシンプルで落ち着いた印象を

色無地とは名前の通り、まったく柄のない着物のこと。白い生地を黒以外の1色で染め上げただけという潔いデザインが、着る人に気品と落ち着いた印象を与えてくれます。柄があると「季節感は合っているのか」「その柄は着用シーンにふさわしいのか」など色々気になりますが、色無地であればそういった心配は一切なし。さらに卒業式の主役であるお子様を引き立て、周囲から決して浮くことがないというメリットも。しっとりと思い出に浸り、お世話になった方々へ感謝を示すのにふさわしい雰囲気なので、入学式よりも卒業式向けだといわれています。格の高い礼装として五つ紋を入れることもありますが、一般的には一つ紋を付けて「略礼装」とし、卒業式以外にもお茶会や食事会などで使えるようにすることが多めです。

付け下げは訪問着に次ぐ略礼装

贅沢を禁止されていた太平洋戦争中、遊女や芸妓の仕事着として誕生。昭和30年代に入った頃から一般層にも広く普及し、お出かけ用のお洒落な着物として現在も愛されています。訪問着との大きな違いは模様の描かれ方。模様が切れることなくつながっている訪問着に対し、付け下げは反物の状態で染色をしているため模様が縫い目で途切れています。胸や肩、袖と裾の各部分に同じ模様が入っているのも特徴です。格付けとしては「準礼装」の1つ下になり、訪問着ほど華やかではありせんが、非常に上品で卒業式や入学式にぴったり。近年では古典柄であれば「準礼装」として扱っても差し支えないという見方も増えています。訪問着よりリーズナブルに手に入るのも嬉しいポイント。

色留袖なら一つ紋もしくは紋がないタイプを選んで

色留袖は主に結婚式などの慶事に用いる着物で、訪問着よりも格は上です。そのため卒業式には格が高すぎる、フォーマルスーツやワンピースのお母様たちの中では過剰すぎるという判断になります。ただし紋の数が1つ、もしくは紋がない色留袖であればやや格が下がり卒業式でも着られるようになります。三つ紋以上は格が高すぎて式典には合わないということを心得ておきましょう。色留袖も訪問着も柄が1枚の絵のようにつながる「絵羽模様」である点は同じですが、上半身の柄の有無で種類が分かれます。上半身は無地、帯下から裾にかけてのみ柄が入っているのが色留袖。肩から胸、帯下から裾にかけて広く柄が施されているのが訪問着となります。判断に迷った時は、柄の入り方に注目してみてください。

■ 色
卒業式の主役はお子様です。お母様はあくまでも付き添いとして、一歩下がった装いを心がけるのがポイント。そのため派手な色よりも、キレイめなパステルカラーなどが適しています。特に春なら、温かく優しいイメージの淡いピンクやイエロー、若草色の着物がぐっと映えます。明るい色に抵抗がある方は、落ち着いたホワイトベージュや知的なシルバーグレーなどもおすすめです。卒業式と入学式で変化をつけたい方は、卒業式は寒色系でよりシックに、入学式は暖色系でお祝いムードを際立たせるのも良いでしょう。また、1枚の着物を卒業式・入学式の両方で着回したいという方も多いと思います。その場合は帯を変えてみるのが◎。卒業式では旅立ちや別れを連想させるグレーや水色、スモーキーなピンクを、入学式では喜びを感じさせる明るめのピンクや藤色の帯を選ぶと雰囲気をがらりと変えられます。

■柄
着物の柄は実際の季節よりも先取りするのが粋だとされています。これは新しい季節の訪れを装いで感じさせるという日本人独特の美意識の表れです。桜がデザインされている着物なら、花開く少し前か遅くとも三分咲きの頃までに着用しましょう。ただし桜のみを描いた柄の場合は、きちんと先取りできていないと無粋だと思われがち。桜だけでなく他の柄と一緒に描かれているものであればそこまでこだわらなくても良いので、着物選びの参考にしてみてください。春の花といえば他にも、葵、藤、牡丹、菖蒲なども素敵です。その年の開化状況をチェックして、上手に取り入れてみましょう。花柄以外ではおめでたい古典柄もおすすめ。例えば、亀の甲羅をイメージした「亀甲文」は連続模様が永遠の繁栄を意味していることから、「卒業後も友情が続きますように」「明るい未来が開けますように」という願いを込めることもできます。柄の大きさについては、大柄なものよりも細やかなもののほうが、優しく上品なイメージが引き立ち人気です。

着物に合わせる小物について

無事に着物が決まったら、次は小物類です。着物は格式や利用シーンによって合わせる小物が変わってきます。細かい部分までこだわって、卒業式にふさわしいコーディネートを完成させましょう。

卒業式は厳かなセレモニーです。まとう着物もフォーマル向けの訪問着や色無地なので、帯も「袋帯」という最も格式が高いものが適しています。普段であれば一重のお太鼓結びが基本ですが、卒業式の時はお太鼓が二重になるよう結んで特別感を演出。デザインは縁起の良い吉祥文様や、同じ柄を繰り返して並べる有職文様が良いでしょう。規則性のある文様は整った印象を与え、コーディネート全体を引き締めてくれます。吉祥文様も有職文様も季節を問わず1年中使えるので、この機会に1本あつらえておくのもおすすめです。また、洋服の場合はネックレスやブローチで輝きを添えますが、着物は帯がその代わりとなります。メモリアルな雰囲気を出すため、礼装用の帯は金糸や銀糸を使ったものが一般的。しかし金糸が多すぎると目立ちすぎてしまうので、袋帯は白や銀が主体の淡い色にして帯締めで変化を出すなど、バランスに気を配るのが上品な華やぎを出すコツです。

帯揚げ・帯締め

着物や帯に”格”があるように小物にも存在し、着物や帯に合わせた小物を選ぶ必要があります。何年も前に購入した着物や、お母様やお祖母様の代から受け継いだ着物を使いたい方も多いと思います。その場合、帯揚げと帯締め、お草履を今のものに新調するのがベター。着物全体から見ればごくわずかな面積しかありませんが、コーディネートの差し色として意外と目立つため、ここだけでも現代のものを合わせると垢ぬけた雰囲気になります。自分でコーディネートを考えるのが難しい方は、思い切ってレンタルを利用するのも手です。帯、帯揚げ、帯締めまで着物に合わせトータルコーディネートしてある状態で借りられるので間違いがありません。

バッグ

バッグは和装用のものでなくてもOK。着物全体のコーディネートを邪魔しないデザインであれば、お手持ちの洋装用バッグでも構いません。ポイントは主に3つ。まずは着物を傷つけないよう角がなめらかなもの。2つめは貴重品と少しの小物が入る程度の小ぶりなサイズであること。着物だと肩から下げられないため、持ち手が短いバッグを両手を添えるように持つと見た目も上品です。最後にできれば気をつけたいのがバッグの形。縦長だとせっかくの着物の柄が隠れてしまうので、横長だとベストでしょう。お子様の卒業アルバムや入学案内などの資料、スリッパは、別でサブバッグを用意しておいてそちらに入れるのがスマート。A4サイズくらいで、色は黒やクリーム色などの単色だと着物とも調和します。

着物を久しぶりに着る際の注意点

自宅で眠っていた着物を何年かぶりに着る場合、いくつか注意点があります。卒業式当日に不測の事態が起きて焦らないよう、事前に準備は済ませておいてください。

■ハンガーに吊るして畳みジワを伸ばす
長くしまいっぱなしにしていた着物には畳みジワが付いています。事前に和装用ハンガーに掛けてしっかりシワを伸ばしておきましょう。日当たりの良い場所に干すと色ヤケの原因になるため、必ず日の当たらない場所で行ってください。洋装用ハンガーでも代用できますが、着物がズレ落ちたり別の部分にシワが寄りしやすいのでご注意を。吊るすだけではどうしても伸びないシワはアイロンで伸ばすこともできますが、アイロンを使う際は、必ず当て布をして低温で行うこと。スチーム機能はNG。着物はデリケートな素材でさまざまな加工が施されており、自己流のお手入れで縮みや変色を起こしてしまったり、金糸や銀糸が織り込んであるもの、ラメが入っているものは溶ける可能性があるので気を付けてください。大切な着物は専門店に相談するのが安心です。時間に余裕を持って点検をしておきましょう。
※和装用ハンガーとは…着物の形状に合わせて作られた専用ハンガー。まっすぐな作りになっていて、着物を広げて掛けられます。伸縮自在で普段は短くして収納も可能。

■広げてシミがないかチェック
「久しぶりに着物を広げてみたらシミが広がっていた…」というのもよくあるケースです。特に衿周りは汚れていることが多いので要注意。もしシミを見つけたら、なるべく早めにクリーニングに出しましょう。自宅で洗濯すると余計に状態が悪化することもあるので、プロにお任せするのが安心です。

■半衿が付いているか確認
長襦袢に半衿が付いているかも合わせてチェック。付いていたとしても古い汚れが浮き出ている場合があります。きれいなものをきちんと用意しておきましょう。

■小物類や着付けに必要な道具も揃えておく
着物と同様に、帯などの小物類の状態も見ておきましょう。シミやカビが広がっていたらこちらもクリーニングを。足りないものがあったら、購入もしくはレンタルを検討してください。
=着付けに必要なもの=
着物、帯、長襦袢、半衿、衿芯、帯揚げ、帯締め、帯枕、帯板、足袋、草履、腰紐5・6本、伊達締め2本、和装用クリップ、コーリンベルト、肌着、着物スリップ、補正用タオル、バッグ

まとめ

フォーマルな着物は大切な節目の日をお祝いするのにぴったりな装いです。袖を通すだけで特別な雰囲気が盛り上がり、思い出の1日がいっそう鮮やかに記憶に刻まれます。学校生活最後の晴れ舞台である卒業式も、これから新たなスタートを切る入学式も、お子様にとってとても大切な場です。そんな貴重な場を礼節をもち、着物を着て参列してみてはいかがでしょうか。