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2023.07.27
コラム

浴衣で夏を思いきり楽しもう

花火大会などの楽しいイベントが復活してきている2023年の夏。自粛生活が続いていた分、今年はせっかくなら浴衣を着てお出かけしたい!と、はりきっている方も多いのではないでしょうか。浴衣の基本やコーディネートのコツ、お出かけ前の準備について予習し、楽しい思い出をいっぱい作りましょう。

【目次】
1 浴衣ってどんな着物?薄物との違いは?
2 浴衣を素敵にコーディネートするコツ
3 お出かけ前にやっておいたほうが良いことや、あると便利な持ち物
4 まとめ

浴衣ってどんな着物?薄物との違いは?

夏といえばやっぱり浴衣。この時期にぴったりな涼しげで淑やかな雰囲気が、女性をいっそう魅力的に見せてくれます。その一方で、着物好きな方であれば夏は薄物を着る機会のほうが多いという方もいるはず。浴衣と薄物は一体どの辺りが異なるのか。両者の違いを紐解きながら、浴衣への理解を深めてみたいと思います。

浴衣と薄物は成り立ちが全く違う

その昔、平安貴族は蒸し風呂に入る際、麻でできた単衣「湯帷子(ゆかたびら)」を着用していました。この湯帷子こそが浴衣のルーツ。その後、時代の流れに合わせて風呂上がりの着衣となり、名前も浴衣に変化していったと伝えられています。江戸時代、銭湯文化が庶民の間に広まると、入浴後に浴衣を着ることが一般的に。現在でも温泉旅館に浴衣が用意されているのは、この名残だといえるでしょう。入浴着として始まった浴衣に対し、薄物は外向け用の着物に起源があります。原型となったのは、平安貴族の女性が身に着けていた十二単の下に着る「小袖(こそで)」です。江戸時代の頃には、今とさほど変わらない形の着物が完成し、夏は薄手の生地でできた単衣=薄物を外出着として用いるようになりました。

元々の用途の違いが生地にも表れている

入浴着や湯上り着から進化した浴衣は、風通しが良く汗をよく吸う生地でできています。主に綿、綿と麻の混合生地が上げられますが、最近は機能性の高いポリエステルも人気です。
夏の外出着として一般化していた薄物は、絽(ろ)や紗(しゃ)でできていることが多め。近年では自宅でお手入れがしやすいポリエステルや、通気性に優れた麻でできたものも登場しています。

浴衣はカジュアル向け、薄物はあらゆるシーンに対応

着心地の良さから、やがて夏のお出かけ着としても定着していった浴衣。ルーツや素材を考慮すると、カジュアルシーンでの利用が適しています。花火大会や盆踊り、納涼祭りなどにぴったりです。逆にいえば、使えるのは夏まつりやちょっとしたお出かけが中心なので、機会があれば積極的に着ておきたい衣類であるともいえます。
薄物は幅広く着用できるのが魅力です。絽でできたものであれば結婚式やお宮参りなどのフォーマルシーンにも着て行けますし、紗の薄物なら色柄によってホテルランチなどのセミフォーマルから日常使いまでOK。麻は自宅で洗濯もでき、カジュアルな普段使いに大活躍です。

着付けの手順や必要な小物も異なる

浴衣は湯上りにゆったり寛げるくらい着付けが楽なのが特徴。長襦袢は不要、下着が透けないよう肌着だけ身に着ければ下準備は完了です。帯も半幅帯(はんはばおび)や、やわらかい兵児帯(へこおび)、すでに結び目が形になっている作り帯など、初心者でも扱いやすいものが揃っています。足元は足袋を履かず、裸足で過ごします。
薄物を着る場合は、どんなに暑い日であっても肌襦袢、裾避け、長襦袢をきちんと身に着けなければなりません。さらに長襦袢には半衿を付けるというひと手間がかかりますが、選ぶ色柄によって多彩なコーディネートが楽しめるというメリットもあります。帯は薄手の素材でできた単衣帯や夏帯を締めるのが一般的。いずれにしても着用シーンに合った格のもの選んだり、自分で結ばなければならないため、浴衣よりも頭を使います。足元は必ず足袋を履くのが礼儀です。このように、薄物のほうが着付けに必要なアイテムもルールも複雑です。まずは浴衣で和装に親しみ、慣れてきたら薄物で日本の夏を楽しむというのも良いでしょう。

■浴衣の着付けに必要なもの
浴衣、帯、下駄、バッグ、腰紐2本、伊達締め、下着(和装用がなければ、首元が広くあいたキャミソールなどでも可)、帯板、コーリンベルト、着物クリップ(洗濯バサミで代用可)

浴衣を素敵にコーディネートするコツ

浴衣を着るのは、1年のうちでもほぼ夏だけなので、着慣れていない方がほとんどです。何をどうコーディネートして良いか分からず、無難に浴衣と帯がセットになったものを選ぶ方もいるかと思います。もちろんそれでも問題ありませんが、余裕があれば1つ1つアイテムを厳選して、オリジナルの組み合わせを追求してみるのもおすすめ。より自分の好みに合ったコーディネートが完成させられるはずです。この章では浴衣と帯の合わせ方や、お洒落度アップのためのプラスワンアイテムをご紹介します。これから浴衣を購入予定という方は、ぜひ参考にしてみてください。

浴衣に合わせる帯の種類

■半幅帯(はんはばおび)
浴衣に合わせる帯の中で最もスタンダードなのがこちら。半幅帯とは文字通り、袋帯や名古屋帯の半分くらいの幅で仕立てられた細帯のこと。正絹、木綿、麻、ポリエステルなど、さまざまな生地があります。可愛らしく装いたい方には、レースでできた半幅帯も◎。「露店で食べ歩きしてシミを付けないか心配…」という方は、自宅で気軽に洗えるポリエステルが安心です。文庫結びや二筋太鼓、みやこ結び、レイヤー結び、割り角出し、貝の口結び、カルタ結びなど、結び方の種類も豊富。好みや気分に合わせて好きな結び方が楽しめます。

■作り帯
すでに仕上がった状態の結び目を、帯に差し込むだけでOKなのが作り帯です。帯を結ぶ必要がなく、初心者でも簡単に見栄え良く着付けられます。結び目はしっかりと固定されているので、型崩れの心配もなし。「車を運転する時に帯が崩れてしまわないか不安」「子どもに着付ける予定だけれど、外出先でほどけてしまったらどうしよう」という場合は、作り帯を選べば間違いないでしょう。定番のリボン型をはじめ、大人っぽい結び方など、多彩な種類のものが販売されています。

■兵児帯(へこおび)
ハリのある半幅帯や作り帯とは対照的に、くしゅくしゅっとした柔らかい素材でできているのが兵児帯です。絞り染めを施したものや透け感のある生地が多く、軽やかで可愛らしい雰囲気があります。女児が締める帯というイメージが強いかもしれませんが、近年では大人の女性でも兵児帯を締める方が増加中。「去年と浴衣は同じなのに、兵児帯にするだけでイメージが変わる」「やさしい印象が今どき」「長時間締めていても苦しくない」と、人気を博しています。ただし、ポップな色を選ぶと子どもっぽくなりがちなので、落ち着いたトーンのものを選ぶのがおすすめ。また兵児帯だけを締めるとグシャっとしてだらしなく見えるので、帯板を使用してキレイめに仕上げるのもポイントです。その他、半幅帯と組み合わせて使う方もいます。前から見ると帯揚げのように見え、後ろから見ると大輪の花が咲いているように見えてとても魅力的です。

浴衣と帯の合わせ方

帯の合わせ方には大きく分けて4つの種類があります。いろいろなデザインがあって選ぶのが難しいかもしれませんが、下記の要点を頭に入れておけば大丈夫!素敵な帯をセレクトしてください。

■浴衣と同系色の帯を選ぶ
浴衣が青なら帯は水色というように、同系色でまとめると全体がすっきりして洗練された雰囲気になります。ただし、あまりに似通った色同士だと印象がぼやけてしまうので、色の濃淡で変化をつけると良いでしょう。

■浴衣の反対色の帯を選ぶ
同系色コーデとは真逆に、浴衣の反対色を帯に持ってくるのもセオリーの1つ。例えば、赤い浴衣×黒い帯、紺色の浴衣×黄色の帯、オフホワイトの浴衣×ダークブラウンの帯などの組み合わせが該当します。全体的にメリハリが効いて、華やかな雰囲気になります。浴衣が濃い色なら帯は淡い色にするといった風に、濃淡にも気を使うのがバランス良くまとめるコツ。

■浴衣の柄に使われている色の帯を選ぶ
これも間違いがないテクニックです。浴衣の柄に使われている色を選ぶことで、統一感のあるコーディネートが叶います。抜き取る色は、大きく使われているものより、控えめに使われているものを選ぶほうが好バランス。

■無地の浴衣にはインパクトのある帯を選ぶ
柄がまったく施されていないシックな浴衣の場合、帯も控えめなデザインにしてしまうと落ち着きすぎてしまいます。せっかくお洒落するのなら、思い切って色や柄、素材に存在感がある帯を締めてみましょう。浴衣がシンプルな分、普通だと派手に思える帯も素敵に映えます。

小物類にもこだわって周りと差がつくコーディネートに

■帯締め、帯留め
帯締めとは、帯の中心を横切る飾り紐のこと。また、その紐に通してポイント使いするアクセサリーのことを帯留めといいます。涼しげなシャーベットカラーの帯締めや、ガラス玉の帯留めをプラスすると、一気に夏らしさあふれる通な着こなしに。

■バッグ
巾着、かご巾着などが好相性。洋服用のカゴバッグでも浴衣と雰囲気が合っていれば活用しても構いません。軽く持てる小さめサイズが女性らしくておすすめ。

■髪飾り
昔ながらのかんざしのほか、固定しやすいコームタイプのかんざし、好きな場所にさしやすいU字ピン付きのコサージュなど、便利なタイプが人気です。

■下駄
足元までぬかりなくこだわれば、浴衣コーデは完璧。夏らしさ満点の桐の下駄、粋でクールな鎌倉彫りの下駄など、さまざまなデザインがあります。機能性重視の方は、クッション性に優れた歩きやすい下駄を選ぶのが良いでしょう。

お出かけ前にやっておいたほうが良いことや、あると便利な持ち物

コーディネートが決まったら、次はいよいよお出かけです。しかし、無計画のまま臨んでしまうと、困った事態に直面することもあります。事前にしっかり準備を整えて、万全の状態で遊びに出かけましょう。

下駄の試し履きは必ずしておくこと

下駄は裸足で履くため、鼻緒ズレを起こしやすいという特徴があります。数年ぶりに履く、もしくは初めて履く下駄は、数日前に試し履きしておくと安心です。履いてみてキツく感じたら、鼻緒の部分に手の指を突っ込んで少し緩めましょう。鼻緒が固い場合は、かるくもんでおくだけでも履き心地が良くなります。鼻緒が擦れる部分にベビーパウダーをはたいておくのも有効です。足に馴染むようになったら、下駄で歩く練習をします。鼻緒をつっかけるように、足の親指と人差し指の股に少しすき間が空くくらいの感覚で履くのがちょうど良いです。そして指先にしっかり力を入れて、地面をつかむように歩きます。あらかじめ試し履きしても鼻緒ズレが心配なら、念のため絆創膏をバッグに忍ばせましょう。

バッグに入れておきたい3つの和小物

■手ぬぐい
1枚あると大変重宝するのが手ぬぐいです。ハンカチ代わりに汗や濡れた手を拭く、食事の際にひざに広げて食べこぼしを防ぐ、地面に座る時に敷物にするなど、いろいろなシーンで大活躍します。

■扇子やうちわ
屋外で涼を取るならやっぱりこれ。特に扇子があると上品にも見えます。扇子を持っていく時は、コンパクトにたたんで前帯にさしておきましょう。

■風呂敷
バッグに入りそうなら、風呂敷も持っていくのがおすすめ。ゴミが捨てられない時にとりあえず風呂敷で包んで見えないようにする、お土産やパンフレットを包むといった風に、サブバッグ的に使えます。浴衣に合わせるバッグは容量が小さいことが多いので、いざという時に風呂敷があると便利です。

まとめ

浴衣は日本の夏の風物詩。しかしここ数年は夏まつりもなく、浴衣を着る機会がなかなかありませんでした。だからこそ今年の夏は、浴衣でのお出かけを楽しみたいもの。お気に入りの浴衣にお好みの帯や小物を合わせて、自分らしいコーディネートを完成させれば当日のテンションもいっそう上がるはず。ぜひ素敵な浴衣を着て、思い出に残る時間を過ごしてください。