あなたのご自宅に眠っている古い着物。もう着る予定はないけれど、「思い出がたくさん詰まっているから」「けっこう高価だったし…」と、なかなか捨てられず持て余してはいませんか。そんな方におすすめなのが、着物のリフォームもしくはリメイクです。大切な着物をもう一度使えるよう生まれ変わらせてみませんか。
着物の生まれ変わらせ方
お母様やおばあ様から譲り受けた着物、若い頃に仕立てた着物、お子様が七五三などで着た着物━━。このような思い入れのある着物を手放すのはとても心苦しいですよね。処分する前にまず一度、呉服店に持ち込んでみてはいかがでしょうか。着物は直線裁ちになっているため、ほどくと細長い布に戻ります。その布を使って新たな着物を仕立てたり、着物とは全く別の小物を作ったりと、さまざまな活用方法があります。着物に精通する呉服店であれば、お客様のご希望や好みに合わせて多彩な提案ができるので、お悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。
着物のリフォームとリメイクの違い
着物の活用方法というと、よく目にするのがリフォームとリメイクです。似たような言葉ですが、微妙に意味が異なります。リフォームは着物から着物へ仕立て直すこと。デザインそのものに変化はなく、裾直しなどのサイズ変更が中心です。一方リメイクには、作り変えるという意味があり、現代的なファッション性のある洋服や小物など、全く違うものに再生することをいいます。どちらにしても上手く生まれ変わらせるにはある程度の知識や技術が必要なので、自分で挑戦する自信がない方は呉服店にお任せするのが安心です。
着物のリフォーム・リメイク前にチェックすべきこと
■生地の弱り具合をチェック
古い着物は多かれ少なかれ生地が痛んでいるケースがほとんど。特にお尻周りは生地が擦り減って薄くなっていることがあります。あまりに生地が弱っていると、再生したとしてもすぐに裂けてしまうので注意が必要です。
■シミや虫食い、日焼けがないかも確かめる
長くしまいっぱなしにしていた着物はシミや虫食い、日焼けなど、さまざまな問題を抱えがちです。シミ抜きや洗い張りをすることで改善することもありますが、そこまでお金をかけるだけの価値があるか悩むところでもあります。呉服店ならその辺りの目利きも確かなので一度相談してみるのが良いでしょう。もしダメージがあったとしても、工夫次第で再利用は可能なのでご安心を。シミがない部分の布だけを使う、パッチワークにするなど、さまざまな方法があります。
■においも要確認
一見きれいでもカビ臭いことがあります。その場合はとりあえず風通しの良い場所で半日~1日干して、臭いが取れるか試してみましょう。
■使える布の大きさは
着物を全てほどくと長さは約10m、幅は36cmほどの反物になります。痛んでいる箇所があると使える範囲はその分狭くなり、ドレスやワンピースなどの大物は作るのが難しくなります。限られた範囲の中で何に生まれ変われるか考えてみましょう。
コストを押さえて早く作り変えたいなら、直線を意識したデザインがおすすめです。着物をほどいた時の反物の形状を上手く生かせば、製図がしやすく、縫う作業もスムーズ。巻きスカートなど直線が多いアイテムを選択するのも賢い手です。
■柄の生かし方を考える
着物には日本伝統の美しい文様が描かれています。どの文様を主役にするのか、柄同士の組み合わせをどうするのかによって、仕上がりが大きく変わってくるのでイメージを膨らませておきましょう。大ぶりで派手な柄は、上半身よりも下半身に持ってくるとバランスが取りやすい傾向にあります。
着物のリフォーム
昔購入した着物を今の自分のサイズに直す、もしくはお母様の着物をお嬢様用に、大人の着物を子ども用に仕立て直すこともできる着物リフォーム。どんなものなのか詳しく解説します。
着物仕立て直しの場合
着物をいったんほどいて反物へ戻し、洗い張りをした後でもう一度着物に仕立て上げることを「仕立て直し」と呼びます。着物全体を反物の状態にして洗うため、なかなか落ちない防虫剤やタンスの臭いも軽減され、光沢や風合いもぐっと良くなります。さらにイチから仕立てることになるので、現在の体型にぴったり合った着物になるのが魅力的。ただし反物のサイズを上回る大きさの着物は作れません。袷(あわせ)の着物を単衣(ひとえ)に変える、胴裏や八卦を新しいものに取り替える、羽織や着物コートにすることもできます。
着物寸法直しの場合
いわゆるサイズ調整のことを「寸法直し」といいます。「若い時と今とで体型が変わってしまった」「お嬢様に譲り渡したいけれど身長や腕の長さが違う」「振袖の袖を切って訪問着にしたい」といった場合に有効です。基本的には、身幅、身丈、裄(ゆき)、袖幅、袖丈、褄下(つました)、抱き幅、衽幅(おくみはば)、衿幅を変更することが可能。生地を中に多く折り込むことで短くしたり、着物の縫い代部分を伸ばすことで長くします。身丈を短くする場合、3寸~6寸程度であれば調整できますが、逆に長くする場合は縫い代がどれだけあるかに左右されるため、希望のサイズにお直しできないことがあります。寸法直しをする箇所が多いと仕立て直しよりも高額になってしまうケースもあるので、事前に呉服店で見積もりを出してもらうことをおすすめします。
着物リフォームの手順
■まずはカウンセリング
着物の状態によってどのような仕立て直し・寸法直しが必要かプロが判断します。サイズ、裏地の色をどうするかなど決められることはたくさん。
■採寸
着物を着る方のサイズを部位ごとに細かく採寸します。
■最適なリフォームプランをご提案
寸法直しではなく仕立て直しのほうが良いのか、染色補正は必要かなど、着物の状態とご要望に応じてアドバイス、見積もりもお出しします。
■仕立て直しなら着物をほどく
着物の糸目を慎重にほどき、身頃や袖などパーツごと別々に分けます。さらにそれぞれのパーツを縫い合わせる端縫(はぬい)をして、反物の状態へ戻します。
■洗い張り
着物を反物にしたら、次はいよいよ洗い張りです。洗い張りとは水洗いのこと。洗った後は一時的に縮みますが、糊付けをして張って乾燥させることで、幅が均一になり風合いもよみがえります。
■染色補正
着物の表と裏とでは日焼け具合が異なるので、染色補正をして色合いの差をなくします。大きく寸法直しする際、以前の仕立てのスジが出てしまうことがあるため、そのような場合にも染色補正が施されます。
■着物へ仕立て直す
美しく生まれ変わった反物を着物へ仕立て直します。
着物のリメイク
着物をほどいて反物の状態にし、そこから全く違うアイテムへ再生するリメイク。普段使いしやすい洋服や小物に変えれば、着物よりも使用頻度をぐっと上げられます。また、着物は生地が丈夫なので上質なアイテムを作りやすいというメリットも。しかも出来上がった品は世界に1つだけしかないオリジナルな作品なので特別感もたっぷりです。ぜひアイデアを凝らして、あなただけの素敵な逸品を完成させてください。
■バッグ
着物特有のインパクトのある柄をバッグに生かすと、ファッション全体を引き締めるアクセントになります。生地が丈夫なのも嬉しいポイント。トートバッグ、エコバック、クラッチバッグ、ハンドバッグ、利休バッグなど選択肢も豊富です。
■日傘
生地が痛んでいないところを厳選して使えば、日傘へ生まれ変わらせることもできます。紫外線が強くなっている現代におすすめのアイテムです。着物に合わせるのはもちろん、デザインによっては洋服に合わせてもマッチします。
■アクセサリー類
イヤリングやピアス、リボン、シュシュ、ブローチなどに変えるのも人気。使う生地が少ないのでリメイクしやすいですよ。和のテイストをさりげなくファッションに取り入れたい方にぴったり。
■ブックカバー
リメイク初心者でも自作しやすいのがブックカバー。端切れでできて直線縫いばかりなので簡単です。いつもの読書タイムがいっそう楽しくなりそう。
■スマホカバー
スマホは毎日使うものなので、お気に入りのカバーだと気分が明るくなります。専属のショップにリメイクをお願いするほか、100円ショップのスマホカバーに自分で布を貼り付けてみるだけでもOKです。
■姿見にかぶせるカバー
布地を大きく使えそうなら、姿見カバーに変えるのも粋。着物の柄を贅沢に見せることができます。
■クッションカバー
クッションカバーに着物を用いれば、お部屋の雰囲気がぐっと上品になります。和室だけでなく、洋室に置いて和洋折衷を楽しむのもアリ。着物は華やかな色柄が多いため、お部屋のアクセントになります。リボンなどの飾りをプラスしたり、四隅にタッセルを付けたりとアレンジも自在。
■テーブルセンター
机を横断するように敷く細長い布、テーブルセンターにするものナイスアイデア。インテリアに合わせて色柄を選んでください。作りがシンプルなので何枚か作って、季節やシーンごとに交換するのも◎。食卓を素敵に演出しましょう。
■洋服
落ち着いた色柄の着物であれば普段使いしやすいと、洋服にリメイクする方も多くいます。アオザイやチャイナドレスなど、アジアンテイストの服とも相性ばっちりです。振袖の華やかな雰囲気を生かしてドレスに作り変えるケースもあります。
■帯もリメイクできます
帯は着物よりもさらに生地がしっかりしているので、バッグの素材に適しています。着物と一緒に眠っている帯があれば、ぜひそちらも再利用してみてください。
リメイク品のお手入れ
着物は絹でできているものが多く、さらに繊細な染色や刺繍が施されているため、お手入れ方法が気になる方も多いかと思います。結論からいうと、基本的には着物と同じメンテナンスをするのが一番。通常の洋服と同じように家庭用洗濯機で洗ってしまうと、色落ち、縮み、ほつれ、歪みなど、さまざまなトラブルに見舞われる可能性があります。特に箔押しや刺繍、絞りがあるものや、縮緬、ウールなどの生地はデリケートなので要注意。使った後は陰干しをして汗を抜き、どうしても洗いたい場合は真水でやさしく手洗いするくらいに止めておきましょう。洗濯しづらいのは困るという方は、洋服ではなくアクセサリーや小物など、お手入れ頻度が少ないアイテムにリメイクすることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか。今回は古い着物を生まれ変わらせるテクニックをご紹介しました。しまいっぱなしにしている古い着物も、工夫次第で新しい活用方法を見つけ出すことができます。特に着物リメイクは作り変えるものに制限がなく、可能性は無限大です。この機会に心機一転、お気に入りの着物をリフォーム・リメイクしてみませんか。着物とともに忘れかけていた大切な思い出も鮮やかによみがえり、きっとワクワクする時間になるはずです。