今年も残すところあと1ヶ月。年が明ければいよいよ成人式です。振袖のコーディネートも決まり、当日を心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、自信を持って成人式に臨めるよう、振袖を着る時の基本マナーをご紹介。所作に気を遣うことでいっそう振袖姿が美しく輝きます。着崩れてしまった時の対処法や当日の持ち物についても解説いたします。
振袖を着ている時の立ち居振る舞い方
振袖は日本女性の第一礼装。まとうだけで背筋がすっと伸び、気持ちも引き締まります。振袖を着ている時は、いつもよりもゆっくりと丁寧に動くことが基本です。どんな時も慌てずに、ひと呼吸置いてから動き始めれば、ぐっと上品に落ち着いて見えます。優雅な所作はまわりの方々にも良い印象を与えるもの。大人のたしなみとして、成人式までに予習しておくことをおすすめします。
■立ち方
まずは基本の立ち方をマスターしましょう。振袖を着ている時は、肩の力を抜いて背筋をまっすぐ伸ばして立ちます。時折、猫背になっていないか、左右どちらかに重心が偏っていないか確認しましょう。手は横でブラブラさせず、おへその辺りで重ねると上品な印象に。足元はつま先がハの字になるようにくっつけます。
■歩き方
次は歩き方です。立っている時と同じく、背筋をピンと伸ばしたまま歩き出します。歩幅はいつもの半分程度を意識して、小さくゆっくり動くのがポイントです。両足の膝小僧が振れたままで内股気味に歩くと、自然と動きがコンパクトになります。草履は指で引っかけるように浅く履き、かかとが少しはみ出るくらいが正しい履き方。鼻緒を親指と人差し指でしっかりはさむと、パタパタと音を立てることなく静かに歩けます。
■階段の昇り降りの仕方
長い袖を引きずらないよう、段差に差し掛かったら袖を重ねて左腕にかけます。裾を踏まないよう気を付けることも大切です。右手でほんの少しだけ裾を持ち上げると動きやすくなります。しかし、ふくらはぎが見えてしまうと恥ずかしいので、足は大きく上げすぎないよう注意してください。体をやや前に傾けると足元が見やすく、姿勢もきれいに見えます。エスコートしてくれるご家族などがいれば、手を取ってもらうと安心です。
■イスの座り方
式典会場のほかにも、移動中の車や電車、お祝いの食事シーンなど、イスに腰かけるタイミングは多々あります。洋服の時と同じような感覚で深く座ってしまうと、せっかくの帯がつぶれてしまうので、浅く腰かけるよう心がけましょう。背もたれと体の間にこぶし1つ分のスペースが開くくらいがちょうど良いでしょう。バッグはこのすき間に置くこと。また、振袖は袖がかなり長いためそのまま座ると床についてしまいます。袖は膝の上に重ねて置くこともお忘れなく。長時間座りっぱなしでいるとつい膝が開きがちですが、そうすると見た目も美しくありませんし、着崩れの原因にもなります。普段から両膝をくっつけて座る練習をしておくと良いかもしれませんね。
■正座の仕方
祖父母様やご親戚のお宅に振袖姿を披露しに行く方もいるかもしれませんが、その際に覚えておきたいのが正座の仕方です。振袖で正座をする時は、上前やすその乱れに注意を払うことが大切。前裾を軽く持ち上げ、膝の前に余裕を持たせてからゆっくり正座します。右手で膝の下を押さえながら座ると裾が乱れません。お尻の下や膝裏の生地が変に寄っていると、座り心地が悪い上にシワにもなりやすいので、しっかり生地を伸ばすようにしましょう。上手く座れたら、袖を左右または後ろに流し、両手を膝の上できちんと揃えます。立ち上がる時は、両手を膝にのせたままゆっくりと腰を浮かせ、両足のかかとを同時に上げてつま先を立てるようにすると自然です。
■車の乗り降りの仕方
つい洋服の時のように足を大きく開いて乗り降りしたくなりますが、着崩れを起こしやすく品にも欠けるため大股はNG。車に乗り込む際は、まず体の前で袖を合わせ、座席に背中を向けて立ち、裾が乱れないようお尻からゆっくりシートに座ります。この時、頭をぶつけてヘアセットが乱れないよう要注意。両足を揃えて上前が開かないよう押さえながら、体を90度回転させて車に乗り込みます。乗車中はどこかにしっかりつかまって、帯がつぶれないよう浅く腰かけた状態をキープしましょう。車を降りる時は、上前を片手で押さえ、つま先を揃えて外へ出し、慎重に立ち上がります。
■乾杯の仕方
成人式の後、振袖を着たまま同窓会に参加するお嬢様もいるかと思います。同窓会の始まりの挨拶といえば乾杯。この時にそのまま腕を上げてしまうと袖がダラリと下がり、腕が丸見えになってしまいます。見せても良いのは手首まで。グラスを持っていないほうの手で袖口を押さえて下がるのを防ぎましょう。ドリンクを飲む時は、グラスの下にペーパーナプキンを添えるのがおすすめ。水滴が振袖に落ちるのを防げるのと同時に、自然と両手でグラスを持つことになって見た目にも上品なので、覚えておきたいテクニックの1つです。
■食事のマナー
食事の際に気を付けたいのは、やはり振袖を汚さないこと。ナプキンやハンカチがあれば膝に広げて食べこぼしをカバーします。大口を開けて料理を食べるのも厳禁です。なるべく一口サイズに切り分けてから口へ運ぶようにしましょう。また、遠くにあるものを取る時は、腕が露出しないよう袖口を押さえてください。手を伸ばした際に、袖が料理に付いて汚れてしまうこともありえるので、無理をせずにまわりの方に取ってもらうのも良いでしょう。
■トイレの済ませ方
狭いと動きにくいので、なるべく広めの個室(洋式トイレ)を選びましょう。以下の手順で慌てずゆっくり済ませてください。
1.袖が床につかないよう前でゆるく結びます。キツく結ぶとシワになるので注意。
2.振袖の裾を下から持ち上げて、帯の上部のすき間に挟み込みます。同様のやり方で長襦袢と肌襦袢もたくし上げます。3枚重ねのままいっぺんに持ち上げると着崩れてしまうので、必ず1枚ずつ行うようにしましょう。
3.用を足し終わったら、肌襦袢、長襦袢、振袖の順にきれいに下ろします。最後に裾がめくれていないかチェックしてください。
振袖が着崩れてしまった時の対処法
どんなに所作に気を配っていても、長い時間慣れない振袖を着ていれば多少の着崩れは起きてしまうもの。そんな時、自分で着崩れを直す方法を知っていれば慌てずに済みます。美しい着姿を保つことも大人のマナーです。今のうちから対処法を頭に入れておきましょう。
■衿元のゆるみをお直しする方法
よくあるのが時間の経過と共に衿元がパカパカ浮いてきてしまうというお悩み。衿元はお顔に近い分、目につきやすいので、ぴしっときれいな状態を保ちたいですよね。着崩れの原因としては、着付けの時に腰紐の締まりが充分ではなかった、腕をあげて手を振るような大きな動作を繰り返してしまったことなどが考えられます。左側の身八つ口(脇下の空き部分)から左手を入れ、下前(前見頃の内側)の衿先を軽く引っ張ることで、ゆるみが解消されます。引いた分の衿先は、きちんと脇にはさんでおくと再発防止に。最後に上前(前見頃の表側)のたるみを指先で右へ寄せ、帯の下にある衿先を少し引いておはしょりを整えます。
■たるみをお直しする方法
胸元や脇まわりがたるんでいるとシワができてしまい、振袖が美しく見えません。上前を手でやさしく撫でながらたるみを右側に集めて、帯の中に入れ込めばすっきりします。
■おはしょりの崩れをお直しする方法
腰まわりの見栄えを大きく左右するおはしょり。理想は帯と平行に適度な幅を保つこと。ここが斜めになっていたり、幅が出過ぎていたりすると、なんとなくスタイルが悪く見えてしまいます。乱れてきたなと感じたら、おはしょりの縫い目と上前のおくみ線(上前とおくみの縫い目)をきちんと合わせて、余分なおはしょりを帯の中に入れ込みます。仕上げに帯と振袖のすき間に両手の指を入れて、左右にしごくように動かし、たるみを脇に寄せて平らにすればOKです。
■下がり気味の帯をお直しする方法
帯が緩んで徐々に下がってきてしまうのもよくあるトラブルです。その場合はまず帯を元の位置までぐっと持ち上げ、小さいタオルやハンカチを帯の下に挟み込みましょう。胴体に厚みを出すことによって締まりが良くなります。ただし、タオルやハンカチが見えてしまっては格好悪いので、しっかり入れ込むことが肝心です。
■上前のズレをお直しする方法
上前が下がって裾がズレてしまうと見栄えが悪いだけでなく、裾を踏みつけて転んだり、それでさらに着崩れてしまうという悪循環に陥りがち。鏡やガラス窓など全身が映るようなところがあれば、さり気なくチェックするようにしましょう。おはしょりの下から上前の衿先を持ち上げ、下がった分の生地を腰紐の中に入れ込み、上前の裾丈を調整するときれいに戻ります。
■後ろの腰回りのたるみをお直しする方法
背後は確認しづらい箇所なので、お手洗いに行った際に鏡でチェックするのがおすすめ。腰回りがダブついていると、お尻までたるんで見えてしまいます。たるんできた部分は両手でやさしく撫でながら上のほうへ集め、おはしょりの下の腰紐へ挟み込みましょう。
成人式に必要な持ち物
所作や身だしなみが洗練されていても、忘れ物をしてしまっては大変です。当日必ず持っていくべきものや、あると便利なグッズをご紹介します。
■成人式の招待状や案内状
住民票に登録されている住所へあらかじめ郵送されます。1人暮らしを始めたけれど住民票は実家のままという方は、きちんと届いているかご家族に確認を。招待状や案内状は記念品をいただく際に必要となるので、必ず持参してください。
■スマートフォン
ご友人との連絡、記念撮影やキャッシュレス決済にも欠かせないスマートフォン。使えなくなると困るので、充電は満タンにしておきましょう。
■小さめのお財布
振袖用のバッグは容量が小さめです。そのためお財布もミニサイズがおすすめ。
■小さめのタオルやハンカチ
濡れた手を拭く以外にも、食事の際にナプキン代わりに膝へ敷いたり、帯の着崩れを直すのにも使えたりと、あらゆるシーンで大活躍。振袖に合ったデザインだとお洒落に見えます。
■メイク直し道具
持っていくとしたら、乾燥を防ぐためのリップクリーム、口紅、ファンデーションなど、必要最低限のものだけにしましょう。
■ヘアピン
成人式当日は北風が吹く1月。ヘアスタイルが乱れてきてしまった時のため、お直し用に数本持っておくと安心です。
■絆創膏
履き慣れていない草履で鼻緒ずれを起こしてしまう方も多くいます。念のため用意しておきましょう。
■クリップや洗濯ばさみ
振袖は袖がとても長いため、扱いが難しいシーンが多々あります。特にお手洗いが難関ですが、袖をクリップや洗濯ばさみで挟んでまとめておくと、袖を引きずらずに両手が使えて楽です。
■折りたためるエコバッグ
式典後にいただく記念品や資料を入れるのに重宝します。振袖用のバッグに入るくらい小さく折りたためて、雨や雪に濡れても差し支えない素材のものが◎。
まとめ
いかがでしたか。今回は成人式で振袖を着る際に意識したいマナーについてまとめました。成人式のお支度もついに最終段階。振袖に似合う美しい所作、着崩れの対処法や当日の持ち物をしっかりチェックしておくことで、より堂々と成人式に臨めるのではないでしょうか。成人式は大人になったことを喜び、責任を自覚する大切な儀式です。身も心も成熟した立派なレディを目指して、最後のお支度に取り組みましょう。