3月・4月といえば出会いの季節。ちょうど卒業式を終えて、次は入学式に向けて準備を進めているご家庭も多いかと思います。そこで今回は、着物で参列する際のマナーなどをご紹介。礼を尽くした着物で参列することで、お子様の節目の1日がいっそう素敵なものになります。入学式の着物レンタルはまだ間に合うので、ぜひ検討してみてください。
【目次】
1 着物で参列する時はルールに則ったコーディネートが大切
2 入学式や卒業式ではNGな着物
3 着物と相性が良い便利なアイテム
4 まとめ
着物で参列する時はルールに則ったコーディネートが大切
入学式や卒業式は厳粛なセレモニー。洋服ならフォーマルなスーツやワンピースを選ぶように、着物もその場に合った格のものを選ばなければなりません。まずは式典に臨む際のルールやマナーを押さえておきましょう。
=入学式や卒業式向けの着物=
■訪問着
入学式や卒業式に着て行く着物の中で1番人気なのが訪問着です。格付けでいうと留袖の1つ下にあたり、紋を入れれば準礼装、紋を入れなければ略礼装となります。フォーマルな式典のほか、結婚式への参列、お茶会、観劇など幅広いシーンで使える上、年齢や未婚既婚を問わずに着られる便利な着物として愛されています。デザインは「絵羽模様」と呼ばれる柄の入り方が特徴。肩から胸、袖、裾まで、縫い目で途切れることなく柄付けされており、着物全体が1枚の絵のように見えます。入学式や卒業式向けの着物の中では最も柄が多く、ほど良い華やぎがあるため、特に入学式に適しているといわれています。近年の傾向としては、紋なしの訪問着を選ぶお母様が多め。紋がないほうがいろいろな場で着られること、レンタルの需要が高まっていることがその理由です(レンタル品は基本的に紋が入っていません)。
■色無地
色無地とは、黒以外の1色で染め上げられた柄のまったく入っていない着物のこと。紋をいくつ入れるかで格付けが変わります。紋を1つ入れて略礼装にすれば、入学式や卒業式にふわしい装いに。たまに無紋の色無地を着ているお母様も見受けられますが、「式典には一つ紋」と考える方が多い傾向にあります。デザイン面はシンプルなゆえに引き立つ凛とした美しさが魅力。ほかの着物よりもぐっと落ち着いた雰囲気なので、どちらかといえば卒業式に向いているといわれています。着物は着てみたいけれど、洋装派のお母様たちの中であまり目立ちたくはないという方にもおすすめです。柄の格付けや季節感に悩まなくて良いというのも、着物初心者には嬉しいポイントだといえます。その一方で、帯や小物の合わせ方でいろいろなイメージを演出しやすく、コーディネートのしがいがある着物であるともいえます。
■付け下げ
「柄は楽しみたいけれど訪問着より控えめにしたい」という声から生まれたのが付け下げです。格は略礼装となります。訪問着と違い、縫い目で柄が途切れて、同じ柄が何ヶ所かに繰り返し登場するのが特徴です。縫い目あたりに模様がない分、訪問着よりも落ち着いた印象になります。一般的に訪問着と比べて価格も控えめなものが多め。なるべくリーズナブルに済ませたい方は要チェックです。
=帯の合わせ方=
着物の格に沿うよう、帯も格調高い袋帯を合わせます。結び方はおめでたい席にふさわしい「二重太鼓」が基本です。普通の一重のお太鼓結びよりもボリュームがあり、華やかに見えます。周りのお母様とかぶらないような、ちょっと外したコーディネートにチャレンジしたければ、二重太鼓のアレンジ結び「扇太鼓」がおすすめ。お太鼓の右上に扇の形をした帯をのぞかせた結び方で、より凝った雰囲気になります。扇は縁起物なのでおめでたい席にぴったりです。
=着物で参列する場合の心得=
入学式や卒業式の主役はあくまでもお子様です。お母様はお子様より目立つことがないよう、1歩引いた装いに徹することが好ましいとされています。洋装ならブラックやネイビー、オフホワイトなどのカラーを選ぶのと同じく、着物もパステルカラーやスモーキーカラーといった、上品でやさしい色合いのものを選ぶと良いでしょう。「感謝」「お別れ」のイメージが強い卒業式なら、ブルーやグレーなどのより落ち着いた色を。「お祝い」「出発」の意味合いを持つ入学式なら、ピンクやイエロー、グリーンなどの明るい色にするといったように、色を使い分けるのも粋です。同じ着物を使い回したい場合は、帯などの小物を少し変えるだけでも違ったイメージが楽しめます。「お洒落」「可愛らしい」というよりは、「気品」や「美しさ」が感じられるかどうかを考えてコーディネートしてください。着物はスーツやワンピースよりも準備に手間がかかりますが、そこに費やした時間そのものがお祝いや感謝の気持ちとなって表れます。せっかく着物を着たなら、たくさん記念撮影をして思い出をしっかりカタチに残しましょう。
入学式や卒業式ではNGな着物
入学式や卒業式などのフォーマルな場では、TPOに合ったコーディネートにすることが特に大切です。礼を欠いた服装で参列すると、お母様だけでなくお子様も恥をかくことになります。そのようなことがないよう、卒入学ではNGとされる着物の種類やデザインを把握しておきましょう。
=格が低すぎる着物=
■小紋
カジュアルなお出かけにぴったりな小紋。1つの細かな模様が同じ方向に繰り返し型染めされており、留袖や訪問着のように柄の上下や身頃の柄合わせがありません。古典的な文様から写実的な柄、アート感覚の柄までデザインはいろいろ。自分の好みやその時の気分で自由に選ぶことができます。普段着の位置づけなので袋帯ではなく、名古屋帯を合わせるのも訪問着との違いです。柄がかなり細かく、一見すると色無地にも見える江戸小紋三役などは、紋を入れることで略礼装となり、入学式や卒業式にも着て行くことができます。このような一部の例外を除き、ほとんどの小紋はフォーマルな場には向かないことを覚えておきましょう。
■紬
小紋と同じく紬もカジュアルな着物なので、入学式や卒業式には着て行けません。紬は糸の段階で染色した後に布を織った絹織物のこと。別名「先染めの着物」とも呼ばれています。全体的に手触りがやや堅く、素朴な印象のものが多め。しかしながら細かく見ていくと、表面がツルツルとしていて光沢がある大島紬や黄八丈、ツヤが少なくやや厚みがある結城紬などさまざまな種類があります。独特な風合いが古くから愛されており、現代でもちょっとしたお出かけに使えるお洒落着として人気があります。
=格が高すぎる着物=
■留袖
留袖はその名の通り、「袖」を「留めた」着物のこと。昔の女性は結婚すると振袖の袖を短く詰めて着ていました。この時、縁切りを連想させる「切る」という言葉の代わりに「留める」を使ったことが、留袖の語源だといわれています。現代ではフォーマルシーンに着用できる最も格式高い着物として知られ、主に結婚式などで用いられます。入学式や卒業式に着て行くと格が高すぎて悪目立ちしてしまうので気をつけましょう。
■振袖
未婚女性の第1礼装である振袖。足元まで垂れ下がる長い袖や、絢爛豪華な色柄が美しく、主に成人式や結婚式で着用されています。こちらも格が高すぎるため学校の式典には不向き。洋装でいうとドレスで参列するような感覚です。張り切り過ぎてマナー違反にならないようにしてください。
■黒紋付
光沢のない黒い無地の生地に、5つの紋が入っています。主にお葬式で遺族が着用することが多い第1礼装です。黒=喪の席というイメージが強いですが、昔は祝い帯を締めて結婚式に着て行くこともありました。式典に黒いワンピースやスーツを着用するお母様も多いので、着物もなんとく黒を選んでおけば無難と思われる方もいるかもしれません。しかし入学式や卒業式には向かないので、着用しないようにしましょう。
=NGとされる色や柄=
■色
お子様の成長を祝う行事では、その場にふさわしくいつもよりもスペシャルな服装で臨みたいもの。しかし先にも述べたように、入学式や卒業式の主役はお子様。お母様は見守り役なので、目立ちすぎるのは禁物です。派手に見えがちなビビッドカラーや原色は避けましょう。
■柄
地色に控えめなカラーを選んでも、柄によっては派手に見えてしまうこともあります。大ぶりな柄、派手な色の柄、金糸や銀糸を多用した柄は避けたほうが無難です。また、小ぶりでも柄数が多いもの、モダンな柄の着物も候補から外しましょう。厳かな式典には、上品で控えめな古典柄がしっくりきます。その一方で、古典柄の中でも注意が必要な柄があります。それが桜を単体で描いた柄です。日本を象徴する春の花なので取り入れたいお母様も多いかと思いますが、着物の世界では「柄は先取りが粋」という考え方があります。桜が咲く前に着るのなら問題ありませんが、今まさに満開という時や散り際に着て行ってしまうと無粋と思われることもあります。もし桜の柄を選びたい場合は、ほかの四季折々の花も一緒に描かれているものを選んでください。このパターンであれば通年OKということになります。柄の選び方が分からない場合は、ぜひ呉服店に相談を。
着物と相性が良い便利なアイテム
せっかく着物を着たのなら、バッグや室内履きなどもこだわって選んでいただきたいもの。着物の品格を損なわない便利なアイテムをご紹介します。
■サブバッグ
着物用のバッグは小ぶりなものが多く、それほど物が入りません。入学式&卒業式では記念品やいろいろな資料が配られることがあるため、A4サイズが収まるサブバッグがあると便利です。色は黒やネイビー、オフホワイトなどの落ち着いたカラーで、無地のものが上品。
■風呂敷
和の趣を大切にしたいお母様は、サブバッグの代わりに風呂敷を持っていくのも◎。渋めの色や和柄だと様になります。使わない時はコンパクトに畳んで着物バッグにしまっておけるのもポイントです。サイズは100cm×100cmくらいのものが余裕をもって包めておすすめ。基本の包み方に「真結び」というものがあり、一度結べば解けにくく、開く時にはするりと解けて大変便利です。事前に包み方を練習しておくと良いでしょう。
■室内履き
準備が後回しになりがちなのが、体育館や教室に入る時に使う室内履きです。ご自宅にある普段のスリッパを使うのも手ですが、使い古したものや洋風なデザイン、派手な色柄のものだと浮いてしまいます。「お洒落は足元から」という言葉もあるように、室内履きにもこだわってより洗練された装いを目指しましょう。着物の時は折り畳めるぺたんこスリッパではなく、ヒールがあるタイプがベスト。着物の裾が床について汚れるのを防ぐためです。また、色は明るめのベージュがおすすめ。黒やネイビーよりも、淡い色の着物や白い足袋と調和します。
まとめ
いかがでしたか。今回は着物で式典に参列する際のポイントをまとめました。「入学式や卒業式は楽しみな反面、自分の服が悩ましい」というお母様も多いかと思います。ましてや着物はいっそうハードルが高く感じられるかもしれませんが、今は一式セットになった着物レンタルも充実しているのでそれほど心配することはありません。一生に数回しかないお子様の節目の1日を、ぜひ素敵な着物でお迎えください。