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お知らせCOLUMN

2023.04.20
コラム

着物のお手入れをマスターしよう

セレモニーに備えてあつらえた訪問着、普段着感覚で楽しむための小紋…。1枚1枚こだわって集めたお気に入りの着物だからこそ、きれいな状態で長く使いたいですよね。しかし着物は洋服と比べてとてもデリケート。雑に扱うと色々なトラブルを招きやすいので注意が必要です。一方、きちんとお手入れさえすれば何十年も着られるのが良いところでもあります。大切な着物を長持ちさせるため、正しいお手入れ方法を学びましょう。

【目次】
1 着物の正しい保管方法
2 着物を着た後にすべきこと
3 着物を汚してしまった時の対処法
4 まとめ

着物の正しい保管方法

いつも着ている洋服もシワがついたらアイロンでのばし、汚れたら洗濯するかと思います。着物も同じく、美しく清潔に着続けるにはお手入れが欠かせません。絹織物である着物や帯は、湿気が苦手な繊細な素材です。そのためカビが生えやすいほか、縮んだりたるみやすかったり、スレやすかったりと、さまざまなトラブルに見舞われがち。ゆえに普段のお手入れがとても大切なのです。まずは正しい収納の仕方をおさらいしていきます。

着物をきれいにたたむ

正しい保管の第1歩はやはり丁寧にたたむことです。着物に汚れがつかないよう、まずは作業スペースをきれいにします。たとう紙の上でたたむとより安心です。着物の種類によってたたみ方は異なりますが、いずれも左手側に衿肩、右手前に裾がくるように置くのが基本。その状態から折り目正しく長方形になるようにたたんでいきましょう。刺繍や箔があるものはその部分に和紙や白布を当てておくと、変色や箔落ちを防ぐことができます。

本だたみ
長着(ながぎ)や羽織のたたみ方。女物、男物、袷(あわせ)、単衣(ひとえ)の着物はこちらの方法が基本です。

■ 夜着だたみ(よぎだたみ)
振袖、留袖、訪問着などのたたみ方。繊細な刺繍や箔、絵羽模様を傷めないよう和紙を当ててたたみます。その他、子ども用の着物、夜着(よぎ)、丹前(たんぜん)に用いることも。

襦袢だたみ
名前の通り、襦袢を美しく保つためのたたみ方です。着物コートにも使えます。

羽織だたみ
本来は両脇にまちがついた羽織のたたみ方ですが、まちがない普段着タイプの茶羽織も同じ方法でOK。しばらく着る予定のない羽織の紐は外しておきましょう。

着物をたとう紙で包む

着物がきちんとたためたら、1枚ずつ和装用のたとう紙に包みます。たとう紙はパルプ製ではなく和紙でできたものがおすすめ。水を吸ってカビやすいパルプに対し、和紙は湿気をうまく逃がしてくれます。たとう紙に着物の写真を貼っておくと、いちいち開かなくても中身が確認できて便利です。

湿気を避けてタンスにしまう

収納は調湿性に優れ防虫効果も高い桐タンス、もしくは衣裳箱がベスト。底に白木綿を敷き、たがい違いになるよう着物を入れていきます。ただし5枚以上重ねると型崩れやシワの原因となるのでご注意を。湿気は下に溜まりやすいので、高価な着物は上段にしまっておくと安心です。通気性が悪いスチール製の収納やポリ容器は避けましょう。また生地を傷めないためにも、帯や小物類は別で収納することをおすすめします。

防虫剤や乾燥剤を使う場合は1種類に

防虫剤や乾燥剤は、生地に適したものを1種類だけ使うのが原則です。複数を一緒に使用すると、化学反応を起こしてシミや変色の原因になることがあります。特に金糸や銀糸を織り込んだものは影響を受けやすいので、着物用の防虫剤を使うのが◎。加えて、防虫剤と乾燥剤はタンスや衣裳箱の四隅に置いて、着物に直接触れないよう気を付けましょう。

着物を定期的に虫干しする

どんなに環境を整えても、長期間しまいっぱなしにしておくとカビや虫を寄せ付けやすくなります。そこで必要なのが虫干しです。虫干しとは、タンスから着物を出して湿気を飛ばし、カビの発生と虫の害を防ぐこと。1週間ほど晴天が続いて乾燥した冬の日に行うのが理想です。着物を1枚ずつ和装用ハンガーにかけ、風通しの良い部屋で正午をはさんで約4時陰干しします。その際、シミや虫食い、綻びがないか一緒にチェックし、問題があれば速やかにメンテナンスしておくと良いでしょう。引き出しや衣裳ケースの掃除、中敷きの紙なども新しいものに交換しておけば、より気持ち良く収納できます。年に3回、少なくとも1回は点検の意味も込めて虫干ししましょう。

虫干しに適した3つのタイミング
■ 7月下旬~8月上旬 土用干し
梅雨の間にたまった湿気を逃がします。

9月下旬~10月中旬 虫干し
夏についた虫を追い払います。

1月下旬~2月上旬 寒干し
着物をしっかり乾燥させます。

 ※年3回行うのが難しい場合は、春と秋の2回や乾燥した冬の日に1回行うだけでもOK。気が向いたときに引き出しを開けるだけでも効果があるので、できる範囲で継続して行ってください。

着物を着た後にすべきこと

洋服の時よりも背筋がすっと伸び、心地よい緊張感に包まれる着物でのおでかけ。無事に帰ってきて着物を脱いだらすぐに寛ぎたいところですが、汗を含んだ着物をそのままタンスへしまい込んだり、しわくちゃのまま脱ぎ捨てておくのは好ましくありません。着物を脱いだ後もひと手間かけることで、きれいな状態をキープしやすくなります。

湿気を飛ばすためハンガーに吊るす

1日中着ていた着物は、思いのほかたくさんの汗を含んでいます。脱いだ後すぐにしまってしまうと、カビや黄ばみの原因となってしまうため要注意。まずは和装用ハンガーにしっかり広げて掛け、風通しの良い日陰に2時間から一晩干すようにしましょう。こうすることでしっかりと湿気が抜けてシワも取れます。長襦袢や帯、腰紐や帯上げなどの小物類も同様に干しておくのがおすすめです。

着物にシミや汚れが付いていないかチェック

広げて干した際、ついでにシミなどが付いていないか確認しておくことも大切です。もし汚れを発見したら、分かりやすいよう一旦、糸で印をつけ、できれば原因をメモしておくと良いでしょう。汗ジミ程度であれば、水で濡らしたタオルでやさしくふき取る、もしくは霧吹きで部分的に水を含ませタオルで叩いた後、風を通せばOK。しつこい汚れは自分でなんとかしようとせずに、専門業者にクリーニングしてもらうこと。無理に擦ると状態が悪化することもあるので気を付けてください。

乾いたタオルでホコリを除去

ブラシ代わりに乾いたきれいなタオルでホコリを払い落とします。特に裾まわりはホコリが付着しやすいので念入りに確認を。箔や刺繍がある箇所はとりわけ優しく扱うこと。擦るのはNGです。

着物にアイロンをかける

吊るしておくだけでは取れないシワはアイロンでのばします。この際、必ず絹に適した温度にし、あて布をして軽く押さえるように手早く行いましょう。

半衿のお手入れ
半衿は汗が染み込みやすい部分。脱いだら外して、中性洗剤を溶かしたぬるま湯に浸けて、たたくようにして洗います。洗い終わったらタオルで水気を取って陰干しに。乾いた後はアイロンをかけてシワをのばします。生絹の場合、スチームを使うと縮んでしまうのでご注意を。また取り扱いが心配な場合は、専門業者にお任せするのが1番です。

足袋のお手入れ
汚れが固まらないうちに手洗いするのがベスト。中性洗剤を溶かしたぬるま湯にしばらく浸けておき、汚れが目立つ部分は洗剤を付けた歯ブラシで軽くこすります。洗剤が残っていると黄ばみの原因になるので、すすぎは念入りに。洗えたら形を整えて陰干しして、仕上げにアイロンをかけます。

■ 草履のお手入れ
着物と同じく、湿気や汚れを放置しておくとカビやシミの原因となります。まずは風通しの良い場所で陰干しするようにしましょう。雨の日に履いて濡れた草履は、天気の良い日に裏面を上にして干し、しっかり乾いてから泥などの汚れを落とすこと。また素材によってお手入れ方法が変わるのでチェックしてみてください。

エナメル
やわらかい布にエナメル専用クリーナーを含ませて拭き、その後乾拭きして仕上げます。クリーナーは時間が経つと変色することがあるので、しっかり拭き取ること。また説明書をよく読み、正しく用いるようにしましょう。

合成皮革
かたく絞った濡れ雑巾で拭き上げた後、乾いた布で水気を取ります。

布製
やわらかいブラシや刷毛を使用し、汚れやホコリを払い落します。

爬虫類の皮
乾いた布で丹念に拭き上げます。

着物を汚してしまった時の対処法

シミや汚れを見つけたら、できるだけ早めに対処することが重要です。しかし焦ってむやみやたらに擦ったりすると、余計にダメージが広がって大ショック…なんてことにもなりかねません。シミや汚れは、何が付着しているのかによって対処法が変わってくるので、まずは原因を特定することが先決です。汚れの種類が分からない、分かったとしても範囲が広い、目立つ箇所にある、汚れが濃い場合は、無理に自己流で対処せずに専門業者にクリーニングしてもらいましょう。

着物汚れ原因別の対処法

■ コーヒーや紅茶、お酒などの水性の汚れ
数あるシミの中でも比較的多いのが飲み物の汚れです。これらをこぼしてしまった際は、裏側から乾いた布を当て、表側から水で濡らした白いハンカチでそっと吸着させるように拭き取ります。強く押し当てたり擦ったりすると、繊維に染み込んでますます取れにくくなるので、優しく押さえるのがポイントです。取り切れない汚れは、専門業者でシミ抜きしてもらいましょう。

ソースや醤油、果汁などの水性の汚れ
水性の汚れなので基本の応急処置は飲み物と同じです。しかしこちらのほうがより取れにくいので、できれば専門業者で早急に対処してもらってください。

マヨネーズやバター、チョコレートなどの油性の汚れ
油汚れは水では取れません。ハンカチやティッシュで汚れをつまみ取ったら、あとは触らないこと。下手にいじると繊維にまで汚れが染み込んで、頑固なシミになってしまいます。応急処置が済んだら速やかに専門業者で見てもらいましょう。

泥ハネによる汚れ
雨の日につきものな泥汚れ。濡れている状態では上手く落とせません。よく乾かしてから、手で軽く揉んだり、柔らかい布で拭いたりして落としましょう。

墨汁などの水性の汚れ
飲み物と同様に、濡れた布で軽く押さえて汚れを吸い取ります。墨汁はとても落としにくいシミです。早急に専門業者でシミ抜きしてもらうことをおすすめします。

ボールペンやマジックなどの汚れ
インク系の汚れは自分で落とすことはほぼ不可能です。専門業者にお任せしましょう。

ファンデーションや口紅の汚れ
油を含んだ化粧品のシミは、水で濡らしたハンカチで拭くとどんどん汚れが広がってしまいます。かといって乾いたティッシュなどで拭き取ろうとすると、繊維の奥に汚れを押し込む結果に…。外出先ではできるだけ触らないのが正解です。自宅にクリーニング用のベンジン(原油から精製した油の一種)があれば、それを布に染み込ませて優しくトントン叩いて落としましょう。しかしベンジンの取り扱いにはコツが必要なので、慣れていない方は専門業者でクリーニングしてもらうのが無難です。

専門業者でできるメンテナンス

■ 丸洗い
綿や麻など水に強い素材なら丸洗いができます。汗を含んだ浴衣などによく用いられる方法です。

シミ抜き
汗などの水溶性の汚れは、丸洗いだけでは取り切れないことがあります。気になる場合はシミ抜きを追加するのがおすすめ。

シミ取り
丸洗いだけでは落ちにくいシミをきれいにする手法。シミの種類によって洗剤を変えて、丁寧にきれいにしていきます。何の汚れなのか伝えておくと作業がスムーズ。

色直し
太陽光による日焼け、経年劣化による退色など、さまざまな原因で色が変わってしまった着物をお直しする技術です。刷毛や筆で色を挿して、変色した箇所が目立たないよう色調補正します。

まとめ

着物はこまめにお手入れして大切に保管しておけば、親から子へ、子から孫へと数世代に渡って受け継いでいけるもの。最近着物の状態を確認していない方は、ぜひこの機会に一度広げてみてください。豊橋市にある呉服専門店山正山﨑には着物アフターケア診断士が在籍しており、さまざまなメンテナンスを請け負っています。「久しぶりに着物を見てみたらダメージが広がっていた…」「汚してしまったけれど自分で応急処置するのはハードルが高い」という方は、お気軽にご相談ください。