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お知らせCOLUMN

2024.05.02
コラム

着物お手入れ専門店でのメンテナンス

着物を長く美しく着続けるためにはセルフケアだけでなく専門店での定期的なお手入れも欠かせません。お手入れの仕方や頻度によって、着物の状態は大きく変わってきます。そこで今回は、専門店でできるお手入れについてくわしく解説。着物のほか、帯や小物類をクリーニングに出すタイミングなどもあわせてご紹介いたします。

【目次】
1 着物お手入れ専門店の基本メニュー
2 着物の長期保存と復元
3 帯や小物類のクリーニング
4 まとめ

着物お手入れ専門店の基本メニュー

いつもより背筋がピンと伸びて心地よい緊張感に包まれる着物でのお出かけ。帰宅したらすぐに脱いでまずは一息つきたいところですが、ぐしゃぐしゃのまま放置したり、お手入れせずにしまい込んでしまうと、シミやカビが広がってしまうことがあります。着物を脱いだらハンガーに広げて干し、汚れやほつれなどがないか丁寧に確認しましょう。もし気になるダメージがあれば、なるべく早く専門店でメンテナンスすることが大切です。シミは時間が経つごとに落としにくくなり、メンテナンス料金も上がっていきます。また、目立った汚れがなかったとしても、一度は汗抜きに出すのがおすすめ。1日お出かけした後の着物はたくさんの汗を吸収しており、脱いだ直後は見えなくても後々黄ばみが浮かび上がってくることがあるからです。ここからは着物を脱いですぐにやったほうが良い専門店の基本的なお手入れメニューをご紹介します。

丸洗い
着物をほどかずそのままの状態でドライクリーニングすることを丸洗いといいます。石油系の特別な溶剤を使い、皮脂汚れ、ファンデーションや口紅などの頑固な汚れをきれいに落とすことができます。着物に用いられている正絹は大変デリケートな素材で、普通に洗濯してしまうと生地が縮んだり傷んでしまうことが多いですが、専門店での丸洗いならそういった心配もいりません。後述の洗い張りに比べて価格もお手頃なので、着用したら必ず丸洗いに出す習慣をつけると良いでしょう。

汗抜き
丸洗いとともにやっておくと安心なのが汗抜きです。名前の通り、汗を落とすことに特化したメニューで、汗の残留成分をすっきり洗い流すことができます。丸洗いは油性の汚れを落とすのは得意ですが、汗や水性の汚れを落とすことには向いていません。ですのでクリーニングに出す場合は、丸洗い+汗抜きの両方をお願いするのがベスト。汗を放置すると黄ばみやカビの原因になるのでご注意ください。特に暑さが増してくるこれからの季節はマストです。「涼しい屋内で過ごしていた」「冬のお出かけだった」としても、人は思いのほか汗をかくものなので、できれば毎回メンテナンスしておくことをおすすめします。

シミ抜き
「食事の際に衿まわりを汚してしまった」「裾に泥がはねてしまった」など、着物を1日着ていると多かれ少なかれどこかにシミをつけがちです。さらにシミは油溶性から水溶性、2つの混合バージョンまでいくつも種類があるので、自分できれいに落とすのは至難の技。擦ったりするとますますダメージが広がってしまうため、無理せず早めに専門店へ持っていきましょう。シミ抜きをお願いする時に、なんのシミなのかを伝えておくとスムーズに対処してもらえます。

※汚れやすい箇所とシミの種類

・衿まわり(前見頃)
食べこぼしによるシミが多い箇所です。
・掛け衿
最も汚れやすい箇所。汗やファンデーションで汚れがち。
・袖口
手首の汗や皮脂汚れがついています。
・裾
泥や砂ぼこりが付着しています。スレができていることも。
・胴裏や八卦などの裏地
汗シミができやすい箇所。特に夏場や暖房が効いた部屋にいた日は大量の汗が染み込んでいます。

着物の長期保存と復元

長い間タンスの中で眠らせていた着物。久しぶりに着ようと思って広げてみたら、シミやカビだらけでとても着られる状態ではなかった…なんてことも。状態が悪化してしまった原因は、お手入れせずに収納していたことや、クリーニングに出していたとしても丸洗いだけで汗抜きやシミ抜きを行っていなかったことにあります。こうなってしまうと自分で改善することはほぼ不可能です。プロの手を借りて着物を美しく蘇らせましょう。

洗い張り
着物をいったん解いて反物の状態に戻し、それから洗浄することを洗い張りと呼びます。仕立て上がった状態で行う丸洗いよりも、すみずみまできれいに洗い上げることが可能。糸穴や縮みもなくなるので生地に張りが出て、購入直後の風合いや光沢を取り戻すことができます。サイズが合わなくなってきて仕立て直しが必要な時や、八卦を取り替えたい時にもセットで利用される人気メニューです。

カビ処理
しまいっぱなしにしていた着物はカビが広がっている可能性大。一見きれいに見えても生地の裏側にびっしりはびこっていたり、カビのにおいが染みついていたりします。カビ臭いということは、繊維の奥深くにカビ菌が潜んでいるということ。このような着物をそのまま着るのは見た目にも美しくなく、衛生的にも好ましくありません。まずは生地に溜ったホコリや汚れを丸洗いで落とし、その後しっかりカビ処理をして清潔な状態に戻しておくと、再び気持ち良く着ることができます。

黄変抜き
シミをつけたまま放置しておくと、ほとんどの着物が黄変してしまいます。黄変とは長期に渡ってシミが空気にさらされることでゆるやかに酸化し、黄色や茶色に変色してしまうこと。油性・水性に関わらず、通常のシミ抜きでは落としきれません。また酸化にともない生地も弱くなり、軽く引っ張るだけでも切れたり穴があいてしまうこともあるので、見つけ次第早急に対処することが大切です。黄変抜きでは漂白作用のある薬品を用いて熱を加え、慎重に黄変を取り除いていきます。大変デリケートな作業で、生地の種類や劣化具合によっては処置が難しいことも。まずはプロに相談してみましょう。

色掛け(染色補正)
漂白系の薬品で色を抜いた箇所に、新たに色を入れて元通りにする作業のこと。3原色の赤・青・黄を組み合わせて、その着物に合った色を作り上げていきます。残った色に対してどの色をどのくらい掛けていけば元に戻るのかを的確に判断する必要がある為、熟練した技術と経験を持つ職人によって行われることが一般的です。

金彩加工、箔ぼかし
頑固な汚れを隠して見た目の美しさを保つため、金属の細い紐で細工をしたり、細かな金箔を吹き付けることもあります。また、剥がれ落ちてしまった金彩を修復する際にも用いられます。こちらも非常に高度な技術を要する作業です。

柄足し
落としきれなかったシミの上に柄を描いて隠す手法。穴あきや傷を修復し、その上に柄を足してダメージを目立たなくさせることもできます。着物に元々描かれている柄を足すほか、お客さまのお好みに合わせて全く新しい柄を描いてもOK。その他、年齢を重ねて派手に感じるようになった柄の色味を落ち着かせたり、物足りない部分に柄を増やしてバランスを整えたりと、さまざまな希望に対応します。

かけはぎ(かけつぎ)
生地にできた穴や擦り傷をふさぐ技術です。気づいたら虫食いがあった、どこかに引っかけて傷ができてしまった、なんて時に活躍します。熟練の技を要するため、経験豊富な着物専門店にお願いすることをおすすめします。

寸法直し
着付けではカバーしきれないほど大きく体型が変わってしまった時や、体格差のある相手に着物を譲る時には寸法直しが必要なケースもあります。主に身幅、身丈、裄(ゆき)、袖幅、袖丈、褄丈(つまたけ)、抱き幅、衽幅(おくみはば)、衿幅のサイズをお直しすることが可能です。まずは呉服店で全身をきちんと採寸して、お直しが必要な個所を割り出しましょう。寸法直しと一緒に洗い張りもしておくと、新品さながらの仕上がりになります。

帯や小物類のクリーニング

■帯
帯は原則としてクリーニングに出す必要はありません。着物のセルフケアと同じように、脱いだらまずハンガーにかけて陰干しし、シワをのばします。仕上げに和装ブラシでやさしくチリやホコリを払い落とせばそのまま収納して大丈夫です。ただしこれらの基本ケアを怠ると、すぐにカビが生えてしまうのが帯の難点でもあります。帯には形を美しく保つために芯が入れられていることが多く、この部分に湿気がたまりがちです。したがってしっかり乾かしてから収納しないと帯の内側にカビが生え、クリーニング費用も余計にかかってしまいます。また、食べこぼしによるシミや雨に濡れたことでできる水シミ、ほつれなどを見つけたら、帯もすぐに専門店でお手入れしましょう。

長襦袢
着物の下に着る長襦袢は、着物よりも汗や皮脂が付着しやすいアイテムです。特に衿まわりと袖口は汚れやすく、放置すると黄ばみや黒ずみが浮き出てくることがあります。きれいな状態をキープするには、着用したら毎回クリーニングに出すのがベスト。その場合、丸洗いに汗抜きもプラスするか、衿まわりと袖口を重点的にケアするようなメニューを依頼すると良いでしょう。半衿は外して別で洗っておくのが理想ですが、お店によってはつけっぱなしでもOKということも。事前に確認しておくと安心です。節約のために長襦袢はできれば自宅で洗って済ませたいと考える方もいるかもしれませんが、正絹でできているものは洗濯すると縮んでしまうこともあるので注意しましょう。

帯揚げ、腰紐
帯を華やかに彩り、帯結びの形を整えるのにも欠かせない帯揚げ。ウエストまわりは帯、着物、長襦袢、肌着と何枚も重ね着していて汗をかきやすいので、帯揚げも湿りがち。湿気を含んだ帯揚げはシワになりやすいため、陰干ししてから収納するのが基本です。目立ったシミやほつれがなければ毎回クリーニングに出す必要はありません。しかし全く洗わずにいると黄変してしまうこともあるので、シーズンオフのタイミングで腰紐と一緒に一度はクリーニングに出しておくと安心です。自宅で洗濯できるものもありますが、素材によっては水洗いできなかったり、アイロンがけが難しかったりもします。洗濯表示や素材をしっかり確認し、少しでも不安ならやはりプロにお任せしたほうが無難でしょう。

肌襦袢、足袋
肌襦袢は長襦袢のさらに下に着るもので、肌着の役割を果たします。直接肌に触れる分、たくさんの汗や皮脂汚れを吸収しています。ゆえに着用後はその都度きれいにすることが重要です。着物や長襦袢と違って木綿でできていることが多く、自宅で洗濯できるためわざわざクリーニングに出す必要はありません。着用後は洗濯表示にしたがって、その都度きちんと洗うようにしましょう。足袋も同じ方法のお手入れでOKです。

まとめ

いかがでしたか。今回は着物のお手入れの中でも、専門店でできるメンテナンスについてくわしく解説しました。自宅で行うセルフケアも大切ですが、中にはそれだけでは落としきれない汚れや、対処が難しいトラブルもたくさんあります。困った時は無理に自分でなんとかしようとせず、信頼の置ける専門店を頼ることが大切です。素早く正しく対処することで、着物の寿命をぐっと伸ばすことができます。お気に入りの着物を長く愛用するためにも、専門店を賢く利用してみましょう。

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